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超高速で老いていく台湾=介護は子どもに依存、根強い施設への抵抗感(鈴木)

2012年05月30日

■台湾の介護事情(1-高齢化状況)■

*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年5月28日付記事を許可を得て転載したものです。


中正養老院
中正養老院 / Adikos

■台湾の介護事情

先日、台北市最大の介護施設である兆如を見学し、介護政策に関するセミナーに参加して来ました。フェイスブックで友人たちから、シェアして欲しいとのリクエストがあったので、せっかくですので、最近怠けていたブログを更新して、台湾の介護事情を簡単にシェアしたいと思います。

介護とは大きいテーマなので、暫定的に6シリーズに分けて、書いてみたいと思います。

1:台湾の高齢化状況
2:台湾の介護制度の過去
3:台湾介護制度の現在と将来
4:台湾の施設介護
5:台湾の居宅介護
6:外国人労働者という課題

台湾に来てから、同僚や介護業界の方々に様々な情報共有して頂いたり、体験をさせて頂き、この場を借りて、皆様に感謝を表したいと思います。


■超高速で高齢化する台湾

さて、まずは第1回、台湾の高齢化状況から、お話しましょう。

台湾の高齢化比率(65歳以上人口比率)は2010年の時点では11%です。日本の23%と比べると、まだまだというレベルですが、推測では、2025年時点で20%、2060年時点で42%にも達するとされています。しかも、この推測は1.3の出生率を前提としているため、実際には、これ以上のスピードで人口が高齢化していく可能性が極めて高いのです。2025年時点では3.4人の労働人口が1人の高齢者を支え(日本は2.0人)、2060年時点では1.2人の労働人口が1人の高齢者を支えることになります(日本は1.3人弱)。

誇れることではないのですが、日本は今後相当の間、世界での高齢化トップランナーとして走り続けますが、台湾が日本以上のスピードで追いかけてきます。なぜスピードがこんなに速いのでしょうか?それは台湾の少子化と深く関連しています。2010年の台湾の出生率は0.89しかなく、2011年も1.07しかありません!日本よりも韓国よりも低いのです。2010年は寅年で、中華民族の風習上、出産を避けていたこともありますが、根本的には女性の晩婚少子化や景気の停滞などが原因としてあります。


■子ども世代への依存が強い老人介護

台湾の高齢化社会のもう一つの特徴は、高齢者の生活が子供世代に大きく依存するところにあります。日本では、定年後は「年金」や今までの資産蓄積を生活にベースにしていますが、台湾では、子供からの資金提供や世話に依存している部分が非常に大きいのです。

たとえば、日本では、高齢者の収入の7割は公的年金で、子供の仕送りによる所得がわずか5%ですが、台湾では、高齢者の収入の半分は子供世帯からの扶養費です。また、今の日本では、介護サービスが普及しているため、親を介護施設に預けることに対する抵抗が小さいのですが、台湾ではいまだに「親不孝」に見られるリスクが大きく、子供や配偶者、ある程度収入があるなら、外国人労働者を雇って、自宅で世話をするのは一般的です。

40~60代の方とこの話をすると、最もよく聞くのは、「親から言わない限りは、とても自分から施設に入れることを言えません」というコメントでした。一昔の日本と似ていますが、それ以外にも、中華民族特有の強い親孝行観や、家族・親戚間の強い関係性など、日本と少し違う要素が入っています。

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*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年5月28日付記事を許可を得て転載したものです。  

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