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2012年06月07日
■米国大使館のつぶやきが中国政府をうごかした
北京の米国大使館は、2008年から敷地内で計測した大気汚染データをツイッターでつぶやいています。上海の米国領事館でも同じく試みを始めています。上海領事館は微博に切り替えると聞いていたのですが、ツイッターもまだやっていたのですね。
計測されているデータはPM2.5(直径2.5マイクロメートルの超微粒子物質「PM2.5」の観測結果)です。GoodからHazardousまでの6段階評価なのですが、北京の場合だと"Unhealthy"なのは当たり前。最悪の"Hazadrous"もたびたび出現します。1時間ごとに
"Hazadrous"
"Hazadrous"
"Hazadrous" とツイートされていくありさまはかなり恐ろしいもの。
昨年末、米国大使館発表と中国当局の発表の乖離があまりに大きすぎると話題になりました。米国はPM2.5の観測結果を発表していますが、中国はより粒子が大きいPM10で大気汚染データを調査しています。が、健康被害との関連がより強いのはPM2.5とのこと。
中国全土で大きな話題になり、「当局は市内じゃなくて郊外で観測している」「要人が住む中南海は超高性能空気清浄機を大量設置しているらしいぞ」との噂まで飛び交う騒ぎに。ついには温家宝首相がPM2.5測定の前倒し導入を指示しています。5月24日には中国環境保護部が全国主要74都市に今年10月までのPM2.5モニタリングを命じています(朝日新聞デジタル)。
(関連記事:北京の空は汚れているか?中国政府対米大使館、3年間の戦い)
■今さら始まった米中の舌戦
中国政府にとっては嫌がらせ以外の何物でもない米国大使館の大気観測。ついに中国政府が表だって反撃してきました。
環境保護部「一部領事館は国内の大気観測結果公表停止すべき」(財経、2012/6/5)
環境保護部副部長の呉暁青は、「駐中大使館、領事館が我が国に対して行っているPM2.5の観測データの発表について、技術上国際的な通例に合わず、中国の要求にも合わず、データは緻密でも規格に合っているわけでもない。一部の大使館、領事館は我が国の関係する法律、法規を尊重し、大気の観測結果を停止するよう希望する。
大気の観測結果は国務院がやることであり、社会の公共利益に関わる事だから、外交員は現地の法律を尊重し、内政に干渉してはならないと定めている、外交関係に関するウィーン条約に違反している。
米大使館の大気汚染度公表、中国が「内政干渉」と批判(ロイター 2012/6/6)
一方、米国務省は、汚染度の公表は中国の法律やウィーン条約に違反していないとの見方を示し、今後も公表を続けていく方針を明らかにした。同省のトナー報道官は、「中国の多くの都市で大気汚染が問題となっている」と指摘し、汚染度の公表は「大使館職員と中国に住む米国民に提供しているサービスだ」と説明した。
外交部「中国は米国の大気観測に興味なし」(外交部 2012/6/6)
記者:環境保護部の責任者が、駐中海外大使館による、中国の都市の大気観測結果公表に反対していたが、米国務省報道官は外交関連に関するウィーン条約には反しないとしている。中国側はどのように考えるか。次に、米国側は中国の駐米大使館が、米国の都市の大気観測結果を公表する事には反対しないとしているが、中国側は何か考えがあるのか。
報道官:駐中大使館が行っている環境観測と公表データは、中国が行っているような法的裏づけが無く、環境観測を行う専門的な能力と条件を備えていない。中国の環境観測結果を観測及び公表することは、外交関係に関するウィーン条約にそぐわず、責任ある行為ではない。このため、我々は関係国家の駐中大使館に、公認されている国際法の原則を遵守し、中国の法律放棄を尊重し、無責任な行為の停止を希望する。2つ目の質問についてだが、我々は興味はない。
PM2.5にまつわる北京の青空作戦(中国国際放送局 2012/2/9)
実はPM2.5の話題と言えば、去年11月にまで遡ります。去年11月1日から、北京にあるアメリカ大使館は館内に設置した設備で自ら観測した北京のPM2.5のデータをツィッターで発表し始めました。そのデータによる北京市の大気の質は、北京市環境保護局の発表とある程度の差があるものだったんです。
06-06-2012 11:00; PM2.5; 191.0; 241; Very Unhealthy (at 24-hour exposure at this level)
— BeijingAirさん (@BeijingAir) 6月 6, 2012