2012年6月19日、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は中国最大級の海賊版流通掲示板が摘発されたと報じた。

■中国最大級の海賊版流通掲示板?!
マカオ・香港税関、中国最大級のインターネット著作権侵害掲示板を検挙
2012年6月7日、マカオ税関と香港税関は共同で、権利者に無断でアニメや映画、音楽など多岐にわたるコンテンツがアップロードされていた総合掲示板「FDZone」の運営者とその家族の計3人を、知的財産権侵害とマネーロンダリングの容疑で逮捕しました。
(…)2003年に開設されたこのサイトの有料会員は3万人、無料会員は89万人に達すること、Alexa(※1)ウェブサイトのランキングでは世界で7,194位、台湾では116位、香港では73位と、多くの利用者がアクセスしていることなどが確認されました。なお、1日あたりの利用者は、1万3千人から5万人に上ります。
「FDZone」には、日本のアニメーションのセクションも設けられており、「機動戦士ガンダム」、「名探偵コナン」、「銀魂」、「BLEACH」、「ケロロ軍曹」など少なくとも11タイトルのアニメーションの侵害が確認され、1日に100人~1,000人が利用していたことが明らかになっています。
このニュースを読んで最初の感想は「有料会員3万人、無料会員89万人」程度で中国最大級のインターネット著作権侵害掲示板になるのかということ。「掲示板の中では最大級」とか「会員全員が一騎当千のダウンロード・マニア」とかいう話なのかと思ったのだが、中国語でも「最大級」に類する記事は出てこない。
「香港・マカオ税関がマカオ歴代最大の国際ネット音楽映画侵害案件を摘発」(
中国新聞網)という記事はあったので、CODAの翻訳に誤解があった可能性もありそうだ。
システム的に見てもFDZONEは規模を誇るというよりは、少数精鋭のアングラ会員を集めるサイトだった。会員になるためには既存会員からの招待が必要だ。他人を招待するのも無制限にはできず、FDZONE内で流通するコインを使用する必要がある。
■手間いらずの家族経営掲示板
会員になった後も自由に掲示板を使えるわけではない。海賊版コンテンツに関する書き込みをして条件をクリアすることレベルアップし、より多くの掲示板が閲覧できる仕組みだった。あるいは有料会員になることで制限のない閲覧が可能になる。
さらに海賊版ファイル自体も掲示板にアップされるのではない。掲示板に書かれているのはP2Pソフトのダウンロード用コードだけ。運営側は自分で海賊版を見つける必要もなければ、大量のサーバー容量を確保するもない。掲示板と会員のレベルアップシステムさえ用意すれば、後はユーザーが海賊版コンテンツをそろえてくれる仕組みが整っている。
実際、今回逮捕されたのも創設者のAndyGOD(すごい名前だ……)とその妻と両親の4人。家族経営で運営されていた。
■中国ウェブサービスでは常識のレベルアップシステム
中国ではこうした会員の身分レベルアップシステムが一般的だ。
FDZONEとほぼ同様の構造を持つ盗撮愛好者交流掲示板については以前取り上げたことがあったが、他にも大手検索サービス・百度の運営するドキュメント共有サービス・百度文庫も「研修生」から「社長」「会長」まで肩書きが変化し、相応のメリットを受けられるシステムを導入しているし、中国最大のメッセンジャーサービス・QQもレベルアップシステムを導入するなど幅広く普及している。先日、発表された新浪微博の有料会員サービスも長期間継続することで、VIP1からVIP6までレベルアップするシステムだ。
中国では虚栄心と実利でユーザーのロイヤリティを獲得する手法はごくごく一般的なもの。日本であまり見ないのはややこしかったり、あるいは銭ゲバ的ないやらしいイメージをもたれてしまうためだろうか。その違いがちょっと面白いところではある。
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