2012年6月15日から17日にかけて、中国のネット検閲システムが、ヤフージャパンなど「Co.jp」ドメインへの接続を封鎖する事件が起きた。

Netcafe / hildgrim
■「co.jp」事件
今回、検閲対象となったのはサイトアドレスの末尾に「co.jp」がついているサイト。「.jp」 や「.com」のサイトは影響を受けなかった。今回の封鎖の技術的な考察について、japan.internet.comの記事「日本の Web サイトへのアクセスが遮断された CO.JP 事件」が詳しい。
影響があるものは TCP/IP の80番ポートの通信、即ち Web サイトの閲覧のために使われる平文のプロトコルのみが対象であることが分かりました。この時点で、メールのやり取りなどの通信には影響しておらず、あくまで通信の遮断は Web サイトに絞って行われていることが切り分けられました。
中国の Grate Firewall(金盾)による検閲・通信の遮断は DNS のポイズニング、IP ブロッキング、URL フィルタリングなどいくつかの代表的な手段があります。このうち DNS のポイズニングについてもこの数年で技術的な手法は変化してきており、今回も「どの方法で CO.JP を遮断しているのか」に注目しました。例えば、Facebook や Twitter へのアクセス制限には DNS ポイズニングが組み合わされて使われており、中国国内から facebook.com や twitter.com への DNS の問い合わせを行うと全く異なる IP アドレスが偽装されて返されます。
今回は CO.JP に限った遮断であったことから、URL フィルタリングと呼ばれる方法(URL に含まれる文字列を見て通信を遮断する)が採られたと推測されます。
中国のネット検閲システムについて、すっきりわかりやすく説明することは非常に困難だ。その理由は多種多様な方法が組み合わされ、また地域やサービスによっても違いがあるため。いわゆるグレート・ファイアウォール(GFW、金盾)による検閲以外にも、検索サイトやSNS独自の検閲システムや人力でのチェック、削除が組み合わされている。
いわゆる「金盾」による検閲でも複数の手法が存在する。またやっかいなことに地域ごと、プロバイダごとに微妙に動作が異なる場合もある。上記記事によると、今回の「co.jp」事件ではURLフィルタリングというもっとも簡単な手法が使われたという。
■中国当局の意図はいずこに
気になるのがなぜ「co.jp」ドメインが検閲対象になったのかという点。上記記事では「設定のミスであれば長時間放置されることはありえない」「各通信事業者でいっせいに同じ設定が投入されたこと」と考えれば、中国側になにかの意図があったと考えるべきと主張している。
一方、海外ITジャーナリストの山谷剛史氏は「例えば中国の政治とは全く無縁のポイントサイトやアンケートサイトすら、なぜか突然中国から数日間アクセスできなくなることがある」などこうした不思議な挙動はよくあることだとして、たんなる運用ミスの可能性もあると指摘している。
中国当局が情報を公開しない限り真実は分からないが、個人的には運用ミスの可能性に一票。山谷氏があげているように、よく意図がわからない検閲開始、解除はよくあることだ。これまで「co.jp」などのトップレベルドメインを封鎖した事例はないだけに、嫌がらせにしては動きが大きすぎるように思える。
■雀士・中国検閲当局
ただどちらにせよ、真実は闇の中である。結局、中国のネット検閲は「わけわからん」部分が多すぎるのだ。
BBCなどの国際的大手メディアやツイッター、フェースブックだとつながった、つながらなかったと大騒ぎになるが、その他にも多くのサイトがネット検閲の対象になったり外れたりを繰り返している。しかも中国のネットそのものが安定していないこともあって、ネットに詳しくない人は「ひょっとしてうちのパソコンが壊れたのでは」と自分を責めるモードになることも多い。
個人的に妄想しているのは「あえて意図不明なネット検閲を繰り返しているのでは」という点。意図的な封鎖とよくわからん封鎖を織り交ぜることによって意図を隠す「迷彩」(麻雀用語)をかけているのではないか。そう思うのは以前のある一時期、グーグルにかけられていたネット規制がきわめて巧妙だったからだ。
それは何回かに一回しかつながらない、一定時間だけ規制するというもので、事情をよく知らないネットユーザーから見れば、「グーグル不安定すぎ、使えねぇ」としか見えないもの。以前、あるネット掲示板を眺めていたら、「グーグルが中国で滅びたのって不安定だからだよね」という書き込みがあり、「それは本気で言ってるの?」「検閲知らないの?」と突っ込まれまくっていた。
とはいえ、知識がない人ならばそういう誤解をしてもおかしくない。ひっかけ雀士・中国検閲当局の面目躍如といったところか。
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何と間違えてco.jpをタイプミスしたと考えてるのか聞いてみたいです