• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

日本大手サイトを軒並み検閲=「co.jp」事件から考える「迷彩」検閲―中国

2012年06月28日

2012年6月15日から17日にかけて、中国のネット検閲システムが、ヤフージャパンなど「Co.jp」ドメインへの接続を封鎖する事件が起きた。


Netcafe
Netcafe / hildgrim

■「co.jp」事件

今回、検閲対象となったのはサイトアドレスの末尾に「co.jp」がついているサイト。「.jp」 や「.com」のサイトは影響を受けなかった。今回の封鎖の技術的な考察について、japan.internet.comの記事「日本の Web サイトへのアクセスが遮断された CO.JP 事件」が詳しい。

影響があるものは TCP/IP の80番ポートの通信、即ち Web サイトの閲覧のために使われる平文のプロトコルのみが対象であることが分かりました。この時点で、メールのやり取りなどの通信には影響しておらず、あくまで通信の遮断は Web サイトに絞って行われていることが切り分けられました。

中国の Grate Firewall(金盾)による検閲・通信の遮断は DNS のポイズニング、IP ブロッキング、URL フィルタリングなどいくつかの代表的な手段があります。このうち DNS のポイズニングについてもこの数年で技術的な手法は変化してきており、今回も「どの方法で CO.JP を遮断しているのか」に注目しました。例えば、Facebook や Twitter へのアクセス制限には DNS ポイズニングが組み合わされて使われており、中国国内から facebook.com や twitter.com への DNS の問い合わせを行うと全く異なる IP アドレスが偽装されて返されます。

今回は CO.JP に限った遮断であったことから、URL フィルタリングと呼ばれる方法(URL に含まれる文字列を見て通信を遮断する)が採られたと推測されます。 

中国のネット検閲システムについて、すっきりわかりやすく説明することは非常に困難だ。その理由は多種多様な方法が組み合わされ、また地域やサービスによっても違いがあるため。いわゆるグレート・ファイアウォール(GFW、金盾)による検閲以外にも、検索サイトやSNS独自の検閲システムや人力でのチェック、削除が組み合わされている。

いわゆる「金盾」による検閲でも複数の手法が存在する。またやっかいなことに地域ごと、プロバイダごとに微妙に動作が異なる場合もある。上記記事によると、今回の「co.jp」事件ではURLフィルタリングというもっとも簡単な手法が使われたという。


■中国当局の意図はいずこに

気になるのがなぜ「co.jp」ドメインが検閲対象になったのかという点。上記記事では「設定のミスであれば長時間放置されることはありえない」「各通信事業者でいっせいに同じ設定が投入されたこと」と考えれば、中国側になにかの意図があったと考えるべきと主張している。

一方、海外ITジャーナリストの山谷剛史氏は「例えば中国の政治とは全く無縁のポイントサイトやアンケートサイトすら、なぜか突然中国から数日間アクセスできなくなることがある」などこうした不思議な挙動はよくあることだとして、たんなる運用ミスの可能性もあると指摘している。

中国当局が情報を公開しない限り真実は分からないが、個人的には運用ミスの可能性に一票。山谷氏があげているように、よく意図がわからない検閲開始、解除はよくあることだ。これまで「co.jp」などのトップレベルドメインを封鎖した事例はないだけに、嫌がらせにしては動きが大きすぎるように思える。


■雀士・中国検閲当局

ただどちらにせよ、真実は闇の中である。結局、中国のネット検閲は「わけわからん」部分が多すぎるのだ。

BBCなどの国際的大手メディアやツイッター、フェースブックだとつながった、つながらなかったと大騒ぎになるが、その他にも多くのサイトがネット検閲の対象になったり外れたりを繰り返している。しかも中国のネットそのものが安定していないこともあって、ネットに詳しくない人は「ひょっとしてうちのパソコンが壊れたのでは」と自分を責めるモードになることも多い。

個人的に妄想しているのは「あえて意図不明なネット検閲を繰り返しているのでは」という点。意図的な封鎖とよくわからん封鎖を織り交ぜることによって意図を隠す「迷彩」(麻雀用語)をかけているのではないか。そう思うのは以前のある一時期、グーグルにかけられていたネット規制がきわめて巧妙だったからだ。

それは何回かに一回しかつながらない、一定時間だけ規制するというもので、事情をよく知らないネットユーザーから見れば、「グーグル不安定すぎ、使えねぇ」としか見えないもの。以前、あるネット掲示板を眺めていたら、「グーグルが中国で滅びたのって不安定だからだよね」という書き込みがあり、「それは本気で言ってるの?」「検閲知らないの?」と突っ込まれまくっていた。

とはいえ、知識がない人ならばそういう誤解をしてもおかしくない。ひっかけ雀士・中国検閲当局の面目躍如といったところか。

関連記事:
「ドイツのネット検閲は中国より酷い。俺たちは幸せだな」官僚のオモシロ発言が話題に
ネット検閲を超えられない人たち=中国ツイッタークローンのつぶやきを読んでみた―中国人民は日中対立をどう見ているのか?<2>
検閲強化で中国ネット民が悲鳴=日本の家族の安否確認にも支障―中国
中国のネット検閲技術がバージョンアップか=“不法”アクセスを感知、接続遮断
中国のネット検閲どうやって回避するの?非情報系大学生の「壁越え」大作戦(Alex)
「マクドナルド」も禁止ワード!中国のネット検閲にグーグルが対抗手段


トップページへ

 コメント一覧 (2)

    • 1. nuuu
    • 2012年06月28日 13:15
    • ミスかもって一発なら誤射みたいな理論ですね
      何と間違えてco.jpをタイプミスしたと考えてるのか聞いてみたいです
    • 2. Chinanews
    • 2012年06月28日 17:50
    • >nuuuさん

      コメントありがとうございます。ちょっと舌足らずだったかもしれませんが、別に誤射だから許すべきという話ではありません。というのも、なぜ意図を云々という話を書いたかというと、なかなか情報が漏れ出ない国・中国ではその一挙手一頭足がなんらかの政治的意図にひもづけて解釈されることがほとんどです。そのためBBCやグーグルプラスにつながった、つながらなくなったでその意図を読もうと大騒ぎされるのですが、実は意味不明な検閲基準の変更は日常茶飯事です。なのであまり深読みするよりも、政治的意図とは無関係に検閲対象となるミスが多いと考えています。

コメント欄を開く

ページのトップへ