2012年6月29日、米通信社ブルームバーグ及び旗下の雑誌・ビジネスウィークのウェブサイトが中国のネット検閲の対象とされた。習近平の姉夫婦がほんの300億円ほど資産を持っていることを報じたのが問題となったもようだ。
■ブルームバーグの習近平記事
問題となった記事は29日付の記事「Xi Jinping Millionaire Relations Reveal Fortunes Of Elite」。共同通信が要約を報じている。
中国次期最高指導者、習近平氏親族の資産3百億超か 米メディア報道
米ブルームバーグは1日までに、中国の次期最高指導者に内定している習近平国家副主席の親族が、3億7600万ドル(約300億円)の資産を保有していると報じた。公開資料を基に独自集計した結果としている。
ブルームバーグによると、今回明らかになったのは主に習氏の姉夫婦とその娘に関する資産。
ほかにも、香港には高級マンションや邸宅など七つの物件(推定総資産価値5560万ドル)を所有。レアアース(希土類)を扱う会社の株式を間接的に18%保有するなどしているという。
これらの資産について、習氏が親族のビジネスに有利に働くよう関与したり、親族らが不正を行ったりしている形跡はないとしている。(共同)
この記事では姉夫婦及びその娘の資産について触れられているだけで、習近平自身の蓄財については触れられていない。しかし記事冒頭では「2004年、反汚職のビデオ会議で、「配偶者、子女、親戚、友人、部下が権力を乱用して私利を貪ることのないようにちゃんと管理せよ」と述べたのに、「習近平の党内における地位の向上とともに、親族のビジネスは鉱山、不動産、携帯電話事業へと拡大していた」といやらしく書かれている。
■習近平ネタの敏感さ
上記記事がでた29日、即効でブルームバーグ及びビジネスウィークのウェブサイトがネット検閲の対象となった。そればかりか新浪微博では「ブルームバーグ」「習近平」という単語で検索ができなくなっている。
太子党(親に政府高官を持つ官僚、企業家)の蓄財話はそんなに珍しい話ではない。例えば、5月にニューヨークタイムズが報じた記事では一気にどっさり紹介し、「儲かりそうな分野が出てくると、太子党がざっくり独占してしまうんですわ」という識者の声を紹介している(
BBC)。
江沢民の息子・江錦恒が米ドリームワークスと君で上海興建動画制片厰を設立したこと
曾慶紅の妻・蒋梅と息子・曾偉がオーストラリアに豪邸を購入したこと
胡錦濤の息子・胡海峰が中国の空港、港湾、地下鉄の安全検査用X線装置を独占する国有企業のボスであること
温家宝の息子・温雲松が中国衛星通訊集団のトップであること
呉邦国の娘婿・馮紹東がメリルリンチと組んで世界最大のIPOとなった工商銀行の上場を手がけたことなど
これでも微博の検索が禁止されたりといった措置がなかったということは、まもなく次期トップの習近平ネタは他の大物官僚以上に敏感な話題であるということなのだろう。いや、習近平本人が記事を読んで激怒したという線も捨てがたいが。
■中国政府の管理から逃げている外資メディアの中国語版サイト
さて、先日、ニューヨークタイムズ中国語版サイトが開設された(
日本経済新聞)。大手欧米系ではウォールストリートジャーナル、フィナンシャルタイムズ、ロイターに続く進出となった。日本では日本経済新聞、朝日新聞、共同通信が開設している。
面白いのが上記中国語版サイトはいずれも中国本土のウェブサイト開設許可であるICP認証を取得していないということ。いつネット検閲の対象となってもおかしくないが、やれ審査だ、許可の更新だとへんに干渉されるよりはいいという判断なのだろう。
ただこれは中国語版ウェブサイトでたいした収益もあがっていない現状だからこそできることではないか。外資系ニュースサイトが中国で本当に稼げるようになった時、改めて中国ネット検閲の影響がクローズアップされることになりそうだ。
関連記事:
中国が保有する戦略核弾頭は3000発?!日本メディアが仰々しく報じた「眉唾」話「焼身抗議者は異常性格の持ち主」中国官制メディアが報道―チベット(tonbani)クーデター・デマに中国政府が過敏反応=マイクロブログのコメント欄閉鎖、官制メディアの批判記事【中国斜め読み】中国政局を無責任に煽る海外メディア=谷俊山中将の失脚(ujc)【薄熙来事件】海外メディアの過熱報道とリーク=環球時報が一転引き締めに―中国(水彩画)官制メディアVS官制メディア=「適度な腐敗を許すべき」環球時報社説を中国青年報が批判(水彩画)