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【iPad商標訴訟】アップルが48億円をお支払い=勝ったのは誰?教訓はなに?―中国

2012年07月03日

2012年6月2日、広東省高級人民法院公式ウェブサイトは、世界的な注目を集めていたiPad商標訴訟が和解したと発表した。アップルは唯冠国際(プロビュー・インターナショナル・ホールディングス)の中国本土子会社に6000万ドル(約48億円)を支払い、中国本土におけるiPad商標を獲得した。


What did people do before iPads?
What did people do before iPads? / antwerpenR

■これまでの経緯と両者の主張

詳細な経緯については記事「【iPad商標問題】「最初にあこぎな裏技使ったのはアップルだ!」中国企業、怒りの告発」を参照していただきたい。経緯をまとめると、

・iPad販売からさかのぼること10年前、2000~2001年にかけ唯冠国際は世界各地でiPad商標を取得(中国本土の商標だけは深圳子会社が保有。残るは台湾子会社が保有)。

・実際に唯冠版iPadを販売したが、全然売れずに販売中止に

・2006年、アップルのダミー会社と見られる英IP社が「使用されていない商標」として商標無効を求める訴訟を起こすも敗訴

・2009年、唯冠からIP社にiPad商標を売却。お値段は3万5000ポンド(約438万円)

・IP社からアップルにiPad商標売却。お値段はたったの10ポンド(約1250円)という茶番劇。

・2010年、魔法のような製品「iPad」販売

・唯冠、アップルを告訴

・2011年末、唯冠が一審で勝訴

・2012年、和解 ← イマココ

でもって、両者の主張はというと、以下のとおり。

・唯冠の主張
IP社が商標を買った相手は唯冠国際の台湾支社。中国本土の商標を持っていたのは中国本土支社だから、「持っていない物を売ることはできない」=「中国本土の商標は今もなお中国本土支社にある」。

つーか、IP社の買い取りがもともと詐欺じゃん。(心の声:アップルが買うんだったらもっとふっかけていたっつーの。)謝罪と賠償を(←20億ドル賠償を求めて米国で提訴)

・アップルの主張
IP社が買い取り交渉している時に「同じグループだから中国本土支社の商標もまとめて売るよ。契約書に中国本土支社の名前がない?無問題!同じグループだし!本社と子会社双方のトップを務める代表もサインしているし!」って言っていたやんけ!証拠のEメールもあるで!


■当たり前すぎる決着

さて唯冠は「賠償金は100億元(約1300億円)やで!」と言ってみたり、中国各地の工商局に販売停止を申請したり、地方裁判所で販売差し止めの訴訟を起こしたりと全力で揺さぶりをかけていたのだが、それもしばらくしてストップ。沈黙が続いていた。日経新聞はアップルが中国政府に働きかけたためと示唆している。

結局、その後はたいして面白い話もなく、今回の和解とあいなった。6000万ドル(約48億円)の賠償金というと、かなりの金額にも思われるが、ウォールストリートジャーナルは1100億ドル(約8兆8000億円)のキャッシュを持つアップルにとっては痛くもかゆくもないとの報道。中国本土で新型iPadを発売する時期をさぐっていたアップルとしてはまあ許せる範囲の勉強料といったところか。

一方、コダック破産のあおりで破綻してしまった唯冠は4億ドル(約320億円)の負債を抱えている。「唯一の資産」とも言われていたiPad商標で逆転ホームランを狙っていたが、借金完済とはならなかったようだ。アップルから払われるお金は唯冠をスルーして、債権を持つ銀行の皆様の懐に流れていく寸法だ。


■iPad商標訴訟の教訓

個人的にはアップルが「金は払わん」と徹底抗戦して、iPadの中国名を「愛板多」(AiBanDuo)に変えるとかオモシロ展開を期待していたのだが、野次馬的期待は水泡と化した(ちなみにいかなる製品も漢字の名称がつけられる中国で、アップルはiPad、iPhoneとアルファベット名称で押し通している。さすがのブランド力!)。

今回の面白みゼロの決着から教訓を読み取るとしたら何だろうか?「中国企業のサブマリン商標告訴怖い!」という反応も多いようだが、唯冠国際はiPad発売の9年も前に商標を取得し、実際に商品も出していたという意味で、いわゆる商標ゴロとは異なる存在だ。

中国メディアは「アップルの法務担当馬鹿すぎワロタwww中国の法律勉強しろや!」(超意訳)的な識者のコメントを載せているが、裁判で明らかになったのは中国本土支社が最終契約に加わっていないことをアップル(というかIP社)の担当者が再三懸念していたという事実だ。

想像するに、たった500万円弱の商標売買交渉ということで、IP社はあまり注文をつけられる立場になかったのではないか。ダミー会社を表に立てて激安で商標を買い取ったアップルがちょっと欲をかきすぎたようにも見える。最初からアップルの名前を出しておけばお値段は少し高くなったにせよ、自分たちの求める形での契約書が結べたと思うのだが。

というわけで、「あんまり賢く相手を出し抜いてはいけません」というのが今回の教訓、というところでどうだろうか?

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