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台湾介護制度の歴史=超高速で進行する高齢化に対応できず(鈴木)

2012年07月04日

■台湾の介護事情(2)■

*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年7月4日付記事を許可を得て転載したものです。


中正養老院
中正養老院 / Adikos 

シリーズ:台湾の介護
2:台湾の介護制度の過去
3:台湾介護制度の現在と将来
4:台湾の施設介護
5:台湾の居宅介護
6:外国人労働者という課題

2回目の今回は台湾介護の第2弾、台湾介護制度の過去をご紹介します。

台湾の社会保障体制は1950年代から、基本的な権益を保障する総合労働者保険から始まりました。1950年には労工保険、1958年には公務人員保険ができました。60-70年代は都市化と工業化が発展し、政府の役割よりも市場の役割が強調されていたため、目立った制度上の大きな変更がありませんでした。

80年代に入ると、都市人口の増加や核家族化の深化など社会構造が変化し、社会福祉へのニーズが増加したため、少しずつ法律が整備されてきました。その代表的なものは1980年に制定された老人福祉法、残障福祉法、社会救助法や、1984年に制定された労働法などです。

90年代後半になると、女性の社会進出や、政治の民主化などが迅速に発展し、人口の高齢化も進展して、全面的な社会保険制度の整備段階に入りました。1995年に皆保険の全国民健康保険をはじめ、また2003年に失業保険、2008年に国民年金制度をはじめました。

では、肝心の介護制度はどうなっていたのでしょうか?2007年までは色々短期間なプロジェクトベースに近い「計画」が打ち出され、それぞれある程度の予算をつけて、部分的にサービスの提供をしてきました。まとまった介護制度が作られたのは2007~2016年の「長期照顧十年計画」です。

これは、低収入者や重度な要介護者(要介護の独居老人)を対象に、政府の財政支出で支えられている介護制度です。社会保険ではないため、政府の本気度や財政的な余裕などに制約されて、限定された範囲での介護サービスしか提供できないようになっています。10年間の計画としては817億台湾ドル(約2300億円)の予算を想定していましたが、実際には2011年までに73億台湾ドル(約200億円)しか予算が割かれていませんでした。

このままですと、急激な高齢化に介護がついていけない局面になります。今介護保険が検討されていますが、国民医療保険制度自体もたくさんの問題を抱えているため、政府の重視度合いが高いとはいえません。では、次回で介護保険制度の制定状況や予定などをご紹介します。

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*本記事はブログ「中華圏の高齢化関連産業」の2012年7月4日付記事を許可を得て転載したものです。   

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