2012年7月6日、日本ネットメディア・サーチナは記事「「日本は南京を解放」…教育家のつぶやきに猛反発=中国」を掲載した。
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「日本は南京を解放」…教育家のつぶやきに猛反発=中国
民間の教育機関、信孚教育集団を設立した信力建氏が6月24日、中国版ツイッターと呼ばれる「微博」で1937年12月の日本軍による南京占領を「解放」と表現したことで、中国各地から猛烈な批判が続いた。南京大屠殺遭難同胞紀念館(南京大虐殺記念館)の朱成山館長は「この種の言論は大きな間違いであり、その歴史観には人を震え上がらせる」として、公開での謝罪を求めた。中国新聞社が報じた。
信力建氏は評論家としても活動しており、広東省広州市白雲区の政治協商会議委員でもある。政治協商会議は、政府や共産党に政策上の提言を行う機関だ。
信力建氏は、当時の満州国軍が南京攻略戦に加わったことを「英雄的で勇敢な軍隊が、友軍とともに南京を解放した」と表現した。「友軍」が日本軍を指すことは明らかだ。
満州国軍とその友軍=日本軍による南京占領を「解放」と書いたことで、当然の如く炎上(といってもそこまで盛り上がらなかったが)したが、サーチナが伝えていないもともとの文脈が面白いのでちょこっとご紹介。
発端は時事ニュースを転載する毎週評論が、政府批判を続け、ミルトン・フリードマン自由賞を受賞した経済学者・茅于軾さんのお言葉を転載したことによる。
中国領土内にある土地。現在は外国のものとなっているが、その地域の市民生活はより自由で収入も多い。あなたは賛同しますか?もし国を中心とした見方ならば同意できないだろうが、民を中心とした見方ならば賛同できる。私は後者だ。国家の利益と市民の利益が一致しない時、国家の利益は市民の利益に従わなければならない。国家は市民のために犠牲になるべきであり、その逆ではない。あなたはどう思いますか?
でもって、このつぶやきに信力建さんがコメント。
かつて不思議な地域があった。その地域の道路長は中国全土の3倍。発電量は中国の9倍。工業生産額は中国の13倍。その地域の最大の都市は東洋のルールと讃えられ、国民は中国をはるかに上回るインフラと教育・医療サービスを享受していた。その地域には移民を希望する中国人が長蛇の列をなしていた。その地域の映画は極東各地で流行した。その地域の勇敢なる軍隊は友軍と一緒に南京を解放した。その地域の名前は満州国。
というもの。この最後の部分の「解放」だけが拾われて炎上した次第。都合が悪くなりそうな前半部分が中国紙記事(及びサーチナ)にとりあげられていないのが残念。
信力建さんは専門の日本ネタを引っ張ってきて中国政府批判を展開するのが十八番。日本絡みということで、日本のウェブメディアにも引用されることが多いが、「日本支配が良かった!」というのが主眼ではなく、「日本をネタに現政府を批判する」という持ち芸なのでご注意を。
満州国に限らず、植民地支配を正当化する論理として「未開の地に文明を伝えちゃるっ!!!」というのは一般的なもの。気合いを入れてインフラを築き、実は赤字経営ですた!というのは結構一般的な話だったりする。
植民地が失われた後も「赤字で金をぶっこんでたんだから植民地はむしろいい面もあったんじゃね」論というのはそれなりに横行しているが、中国内部から「愛国主義で国民を搾取する中国共産党よりも、ステキなインフラ整備してくれていた植民地のほうが幸せなんじゃね」論が出てくるというのはちょっと皮肉に感じたりもする次第。
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