中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年07月28日
今年から来年にかけ、最低賃金の大幅引き上げが進んでいるタイ。上げ幅は40~70%に達している。その煽りを受け、物価の高騰が続いている。政府もインフレ対策を打ち出したが、これが日本では考えられない「可愛らしい」(?)ものなのだ。
■対策その1:お国の指導で安売り雑貨店が続々オープン
第1位の対策は、以前にも紹介した、国の指導による安売り店「トゥーク・チャイ」(お気に入り)の開設である。経済合理性を無視した、こんな小手先のアイデアで物価対策になるのかなあと思っていたら、やはり、「そうは問屋が卸さない」状況になっているようだ。
国が16億バーツを投じて、全国に1万店、トゥーク・チャイ店を作るというのだから、商売をしたい人が多いタイのこと店を開く希望者はたくさん集まる。13000人以上が集まったそうだ。7月半ばには、バンコクのインパクト・アリーナで5000人ほどを集めて、指導会を行なった。6月ごろから店を開く人が増えてきて、「安いから良く売れる」といううわさを聞いて、多くの人が志望しているという。
しかし問題は仕入れである。いかなるルートで市価より15~20%安い、米、砂糖、植物油、卵といった日用品を仕入れられるのか。ある報道では、6月に店を開いたものの、発注した品物がほとんど届かず、店はあれども品物がないという状況もあるという。
政府は、どうやって手品のように安い日用品を確保し、サプライ・チェーンに乗せて、提供できるのだろうか?棚が空っぽで、せっかく来たお客がよそへ行ってしまうということが起こらなければいいが……。
■対策その2:大衆食価格制限令
第2の物価対策は、商務省が6月半ばに打ち出したもの。全国の約半数にあたる38県((外食費が収入の10%を超えるとか、一品30バーツを超えているとかいう基準で選ばれたらしい)で、食堂の基本メニュー7品で、20~30バーツ以内に抑えようという技である。北タイのチェンマイやランプーンも含まれるという。
大衆食堂やフードコート、市場やバスターミナルの食堂が対象である。デパートやショッピングモール、スーパーのレストランは35バーツまで良いらしい。違反者には、14万バーツまでの罰金または7年間までの懲役が課されるという。
この7品というのが、まさにタイの食堂の代表的なお皿なので紹介しておこう。カーオ・ゲーン(おかず・ごはん)と呼ばれる類の基本食である。物価の安い北タイでも、いまや35~40バーツはする。
(写真はバンコク・ポスト紙より)
1.カオ・パット・ムー/ガイ(豚肉/鶏肉入り焼き飯)
2.カオ・パット・ガパオ・ガイ/ムー(鶏/豚肉入りバジル炒め)
3.カオ・ゲーン(おかずぶっかけご飯)
4.クエティオ・ムー/ガイ(豚鶏肉入り麺)
5.カオ・カイ・パーロ(ゆで煮卵かけご飯)
6.カオ・カイティアオ・ムーサップ(ひき肉オムレツご飯)
7.チョーク(くず米おかゆ)