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中国の局所的大失速を考える=エコノミストが李克強統計を特集

2012年07月23日

記事「中国の経済統計はごまかしだらけなのか?ちまたで噂の統計改ざんネタを考える」でとりあげた、「李克強が重視する三つの統計」について、経済誌エコノミスト7月10日号が紹介している。


20120723_写真_中国_経済_統計

■李克強、考えすぎってことかしら?!

「李克強が重視する三つの統計」とは、電力消費、鉄道貨物量、銀行融資を指す。ウィキリークスが公開した米外交公電で明らかとなったものだ。李克強の発言は2007年、外交公電の流出は2010年だが、中国経済の先行きの不透明感が増すにつれ、中国の実態を知る手がかりとして再び注目を集めている(ロイター)。

というわけで、エコノミストの記事はどのように「中国GDPのウソ」を暴いてくれるのか、楽しみに読んだのだが、統計捏造の話はゼロ。逆に上記3指標がかなりGDPと連動しているということが強調されているので、「あれ?GDPはあんまりごまかされていないってこと?!」という肩すかし感が爆発する内容だ。

別に「3指標を見れば中国経済の闇が浮かび上がるっ!!」という結論にせよとは言わないが、「GDPは信じていないのです」という李克強発言を枕に持ってきている以上、「李克強さん、中国のGDPも結構信じられるものなんですよ」の一言ぐらい入れて欲しかった。


■中国大失速?!

さて、エコノミストの特集タイトルは「中国大失速」。「輸出減少/積み上がる在庫/不動産カネ詰まり」「見かけより深刻な実態」などなど眺めただけで、中国やばいやんけ!と感じさせる言葉がずらり、だ。

で、その「見かけより深刻な実態」を知る手がかりとなりそうなのが「李克強が重視する三つの統計」だが、これをじっくり読むと特集タイトル(=編集部)の煽りっぷりとの温度差が面白い。

「統計(1)銀行融資」を担当した柯隆氏は足元の状況よりも、イベントエコノミー(五輪、万博が牽引するインフラ投資)の終焉による景気減速と金利が自由化されていないという構造的問題を指摘する内容だが、「統計(2)電力使用量」を担当した王雷軒氏は「リーマン/ショック後と比較してみれば、足元の経済が変調し始めているとは言え、電力使用量が前年比マイナスに至っていないことから、大幅な減速を懸念するほどではない」と評価。「統計(3)鉄道貨物量」を担当した田代英敏氏は伸び率がリーマンショック後の伸び率に近づいたと指摘しつつも、今秋の党大会に向け景気対策が穏やかに導入されると述べるにとどまっている。

そも特集冒頭の解説をよく読むと、「大失速=8%成長割れ」ということのようだ。「しかし、グローバル市場は「GDP8%割れ」のショックを十分に織り込んではいない」とのことなので、8%割れも大変なことなのかもしれないが、そも今春の両会で温家宝が「経済成長目標値は7.5%やで!」と宣言している以上(とはいえ8%目標を大きく上回るのがずっと続いていたので目標値そのものに大きな意味はないのかもしれないが)、「うーむ、大失速でしょうか?」的な疑問がつきまとう。


■今の中国経済、何が問題なのかしら?!

というふうに考えていくと、「今の中国経済何が問題なの?」「なんでこんなにやばいやばいと騒がれているの?」「温家宝は経済視察を連発したり、対策導入したり、激しく動いているように見えるけど、何にびびっているの?」というところに考えが戻っていく。

素人としての感想を述べるならば、輸出中心の製造業の苦境であったり、政治力の弱い民間企業の資金繰りの問題であったりであり、中国という単位で考えてはよく分からない局所的な危機であったりということだろう。中国が金融とインフラ投資のバルブを開けば国家経済全体のハードランディングを避ける余力はあるとはいえ、それをやってしまえば問題を先送りにするだけ。

中小企業の救済や過剰生産力の淘汰、雇用の確保といった問題をクリアしつつ、投資中心・国有大企業中心という現状の経済的欠陥を校正していくかというあたりが問題になる。金融自由化の問題をとってみても、昨年の温州金融危機後に導入された民間金融の管理システムがようやく始動し今後の全国展開が期待される、国有企業の独占分野に民間資本の導入を促すなど、ひそやかに問題解決の布石は打たれている。

素人としては面倒臭いながらも、そうしたひだひだに注目しなければ、「中国大失速や、いなや?」だけではつかめない状況にあるということではないか。

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