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「他国の省エネのために中国は犠牲になっている」中国の格安太陽電池と日本のエネルギー政策

2012年07月26日

激安太陽電池を世界に輸出している中国。他国の反発が広がる中、経済参考報は「中国のエネルギーを使って、他国のための省エネ製品を作るのはどうよ」という専門家の意見を伝えている。


solar_cell
solar_cell / jigedine

■中国製格安太陽電池の波紋


インテルのスピンオフ企業であるSpectrawattの他、Evergreen Solar、Solyndraが2011年8月から9月にかけて相次いで破産を申請している。
ビジネスニュース 市場動向:太陽光パネル産業、供給過剰でさらなる苦境に - EE Times Japan

2011年9月、米政府からの5億ドル超の融資保証を受け、大きな期待を集めていた太陽光発電パネルメーカーのソリンドラが破綻し、メディアをにぎわす騒ぎとなった。
太陽電池メーカーはなぜつぶれたか:日経ビジネスオンライン

と、中国の格安太陽電池の影響が広がる中、米国、欧州は反ダンピング税を科す動きを見せている。

商務省は中国からの太陽光発電機器輸入に対し最大250%の反ダンピング(不当廉売)関税を課すと2011年5月17日に発表。(…)最終決定は10月10日の予定だという。
米商務省:中国製の太陽光発電機器を追加関税の対象と判断 - Bloomberg

中国機電産品進出口商会は9日、EUが中国企業に対する提訴を準備しており、EUが立件調査を展開する可能性があると指摘。中国機電産品進出口(輸出入)商会と中国資源総合利用協会可再生能源(再生可能エネルギー)専門委員会は、企業や関係者がEUの調査に注意するよう警告を出した。EU市場を失うとなれば、少なくとも6~7割の企業が倒産することが予想される。
朝日新聞デジタル:EUが中国製太陽光発電製品に反ダンピング調査を近く発動 企業に打撃 - 新華社経済ニュース - ビジネス・経済

また中国は報復措置として米国、韓国の多結晶シリコン(太陽電池の原材料)について反ダンピング調査を実施すると発表している(日本経済新聞)。


■温家宝首相が補助金政策失敗に言及

中国の太陽電池産業は2004年から火を噴く勢いで急成長。生産量は年々倍増し、世界最大の太陽電池輸出国となった。2011年、全世界の太陽電池製造量は3300万キロワット相当に達したが、中国の生産能力はなんと3500万キロワット。全世界の生産能力は4500万キロワットなので、中国一国だけで世界の8割の生産能力を持ち、世界中の需要をまかなえる計算となる。

すさまじいばかりの生産過剰の背景にあるのは政府の補助金だ。さらに我こそが太陽電池の覇権をにぎらんとする各地方政府の思惑もからみ、需要無視の生産拡大チキンレースが続いた。先日、温家宝首相も「太陽電池など新興産業の補助金はあかんで。生産過剰になっとるわ」との談話を発表。リーマンショック後の4兆元(約52兆円)出動に続き、任期中に自分の失敗を認めるかのような発言を繰り出している。


■日本のエネルギー政策にも影響あり

というわけで、今後の風向きとしては無謀すぎる補助金のカットと企業の淘汰になるわけだが、経済参考報が掲載したアモイ大学中国エネルギー経済研究センターの林伯強主任の発言が面白い。いわく太陽電池の生産には大量の電気が必要。ちゃんと稼働させれば1.9年程度で元が取れる計算だが、中国の現状は「自国のエネルギーを浪費して、他国の省エネに貢献している」とのお話。生産能力を中国自身が必要としている2000万キロワット相当にまで削減するべきだと提言している。

政府の補助金付きのダーティーな価格競争を挑まれた他国としては「何を被害者ぶってるのか」と怒り心頭になりそうな発言だが、まあ言わんとしていることはわからないでもない。

さて、ここまで中国、米国、EUといった国・地域の名前が出てきたが、我らが日本とて他人事ではない。福島原発事故を受け、再生可能エネルギーの大々的な導入が検討されているわけだが、中国の格安太陽電池をめぐる情勢が激しく不安定なのだ。特に長期スパンで買い取り価格を決めた場合には、中国の補助金政策の転換は大きな影響を与える可能性がありそうだ。

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 コメント一覧 (2)

    • 1. 啊啊男
    • 2012年07月27日 20:54
    • 世界的には太陽光バブルなんて去年弾けてるのに、日本では原発事故の影響で、まだもてはやされてるのがなんか心配。あんなの所詮は補助金目当ての産業。化石燃料の価格も随分落ち着いてきてるのに、買取とかやって、結局、電気使う側が損みたいにならないといいが。
    • 2. Chinanews
    • 2012年07月27日 21:53
    • >啊啊男さん
      クリーンエネルギーが使えるなら使うにこしたことはありませんけど、まだまだハードルは高いですよね。今さら大補助金時代に突入するのは勘弁としか言いようがないです。中国はだいぶ風向きが変わってきた気配。

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