2012年7月26日、環球時報は記事「
少将:75%の琉球人は独立、中国との往来回復を要求」を掲載した。人民解放軍の高官、羅援少将が「沖縄は日本の領土ではない」と発言したことが話題となっている。
沖縄 / hagoromogumi
■愛国論文はパクリだった
人民網日本語版は記事の翻訳を掲載している。
釣魚島が日本のものではない4つの理由
第3に琉球諸島は日本に属さない。琉球はかつて中国の藩属国だったのだ。琉球諸島は紀元1372年から中国の明朝に朝貢を始めた。国王は明朝の冊封を受け、官民は実に頻繁に明朝と往来していた。1879年に日本が出兵し、占領するまで琉球王国はずっと中国の朝廷に直属する独立王国であり、その国民の大部分は福建省、浙江省、台湾沿海地区の住民であり、祖国大陸と血筋が相連なるのみならず、言語も文字もみな中国語であり、法制や制度も大陸の朝廷と完全に一致していたのだ。1945年に日本が敗戦し、琉球も日本から脱して自主性を回復した。中米国交樹立が視界に入った1971年、米国は中国が琉球の主権を回復した後に軍事基地の足場を失うことを恐れ、琉球の施政権(決して主権ではないことに注意)を日本に引き渡した。米国の決定を覆す力のない琉球の民衆数万人は広場に集まって号泣し、日本の侵略者を追い払うことを誓った。それから数十年の間彼らは日本を駆逐して独立を勝ち取るための闘争を止めたことはない。2006年3月の琉球全民投票では、75%の民衆が独立して中国との自主的往来を回復する事を要求した。残る25%は日本人の血筋なので独立こそ要求しなかったが、自治には賛成した。日本はやはり釣魚島問題で中国を相手にむきになってはならない。琉球が日本のものかどうかもさえもが問題になるのだ。
この記事を読んで私は怒りに打ち震えた。中国がその魔の手を沖縄にまで伸ばしてきた……からではない。実はこの記事、本サイトが紹介した中国が誇る電波コラムニスト・唐淳風先生の論をパクリまくっているのだ。一言、唐先生に言及があってしかるべきなのに、まるで持論であるかのように堂々とパクっている。
唐淳風:日本は中国と釣魚島について交渉する資格はない。
米国の決定をくつがえす力がなかった琉球人は、数万人が中心広場に集まり号泣した。そして日本の侵略者を追い出そうと誓ったのだった。30年以上が過ぎたが、日本を追い払い独立を勝ち取ろうとする戦いが中止されたことはない。2006年3月4日、琉球全市民の住民投票が行われ、75%が独立し、中国との自主的な往来を取り戻す選択に一票を投じた。残る25%は日本の血をひいていたため、独立を要求することはなかったが、しかし自治に賛成票を投じた。
タイトルにまで使われている「中国との往来回復を要求」も唐先生からの引き写し、だ。
さて多くの論点があるが、気になるところは「2006年3月4日、全琉球市民による住民投票が行われ、75%が独立に賛成した」の下り。そうした事実はないようだが、唐先生から羅少将へ、そして今後も続く転載、孫引き、盗用の嵐によって、中国のごく一部の人々の間では「沖縄人の75%は独立を望んでいる!」という「事実」が広がっていくのだろう。
■日本の陰謀
「琉球はかつて中国の藩属国だった」という一文から、「中国が沖縄を欲しがっている?!」と誤解している方もいるようですが、文章を素直に読めば「独立支持」でとどまるもの。とはいえ、なぜ中国はいまさら沖縄の領有権を問題にするのか、が気になるところだ。
この点について、元祖沖縄独立論の唐先生のロジックは面白い。
日本の琉球支配にはまったく合法性がない。合法性を獲得する唯一の道は中国政府と交渉すること。琉球問題に関する協議に中国を調印させ、琉球支配権の承認をだまし取ることしかないのだ。東シナ海の油田問題や釣魚群島の帰属問題でたびたび問題を起こすその目的は、中国政府を交渉のテーブルに着かせるため。琉球の民意を無視して領土確定協議に調印させることにある。もし東シナ海のガス田と釣魚群島の主権が中国に属するものとして調印されたとしても、それは境界線外にある琉球の主権が日本にあると認めることになる。こうなれば日本の琉球占領は合法的な根拠を得て、琉球民衆の独立要求は鎮圧されることになる
要約すると、「日本の狙いは尖閣諸島の保持にはない。尖閣を中国のものと認める領海確定協議を調印することで、沖縄を日本のものと認めさせる陰謀」というのが論点だ。
羅少将の論文には「日本はやはり釣魚島問題で中国を相手にむきになってはならない。琉球が日本のものかどうかもさえもが問題になるのだ」との一節がある。「あんまりがたがた言うと、沖縄の帰属が問題になるぞ」という意味なのだろうが、このロジックもまた唐先生から盗用と言えそうだ。
■中国人の気持ちいい生活?!
この問題について、テンセントの特集ページ「今日話題」の「少将が「琉球は中国に属する」と放言=その背景とは」という記事を掲載している。「琉球は中国に属する」などと羅論文には書いていないのだが、環球時報記事が他サイトに転載される際に、この手のさらに楽しいタイトルがつけられたものと見られる。
今日話題はまず「沖縄は古来より中国の領土」「沖縄人の大半は独立を望んでいる」というのはウソだと指摘。その上で人民解放軍高官の勇ましい発言やら、中国で売れ筋の新聞である軍事紙がやたらと勇ましい言葉を連呼していると紹介している。勇ましい発言やら、日本など他国の挑発行為が新聞を売るネタになっているというわけだ。
最後のまとめも秀逸だ。「新聞聯播(CCTVの夜7時のニュース。新技術開発や社会福祉の充実、中国の飛躍など「良いニュース」しかないことで有名)の世界では幸福で安寧に暮らせる。タカ派軍人と軍事メディアの言説の世界では雄々しい気持ちを味わうことができる。中国人は気持ち良く生きるための手段を手にしている」と皮肉たっぷりにまとめている。
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