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2012年07月31日
钓鱼 / shizhao
■「放生」と釣りブーム
最近、中国で流行っているお手軽な善行の積み方、それが「放生」。動物を野生に返してやることを指す。芥川龍之介『蜘蛛の糸』的な、命を救うことによって善行ポイントを獲得するというもの。最近ではなんと「ネット放生」まで登場。ネットで注文していただければ代わりに動物を放しておきます、というますます便利な技まで登場している。
今回、膠南市の釣りブームを呼び寄せたのもこの「放生」が原因だ。吉林省からやってきたという約20人の団体が近くの養魚場から1万匹の魚を購入。海に放したという。それを聞いた付近の住民数百人が港に殺到。慈悲の心によって海に帰されたばかりの魚をばんばん釣り上げていたという。住民によると、膠南市には養魚場が多く、こうした「放生」も年数回はあるという。もっとも放された魚の数、そして釣り人の数ともに今回は空前の規模だと話している。
■「放生」と外来種
リリースと同時に釣り上げられるというのはいかがなものか、と思わないでもないが、もう一つ、問題がある。それは今回海に放された魚が外来種の「レッド・ドラム」だということ。従来はこの海に住んでいなかった魚が大量に放たれたことで生態系への影響も懸念される。
網易の記事「個人的な善行を求める道徳ショー」によると、「放生」の問題性はこれまでにも指摘されている。外来種の問題ももちろんだが、それだけではない。河北省の苗耳洞村では「数千匹のヘビを野生に返す放生」が行われてしまったため、村人総動員でヘビを捕獲する羽目になったとか。人に迷惑をかけてまで、善行を積みたいという考えはいかがなものかと指摘している。
ところが膠南市当局はのんきなもの。ある担当者は「レッド・ドラムは小魚やエビを食うからね。短期的にはエビとかの数が減っちゃうかも知れないけど、そのうちばらけて別の海に行くから大丈夫でしょ」と鷹揚に構えていた。
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