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姉を救うために遺伝子を選ばれた子ども=中国初の「デザイナー・ベビー」誕生

2012年08月07日

2012年7月9日、中山大学附属第一医院は、中国初の「デザイナー・ベビー」誕生を発表した。8月6日、財新網が伝えた。


China portrait child
China portrait child / jadis1958


デザイナーベビー(designer baby)とは、受精卵の段階で遺伝子操作を行なうことによって、親が望む外見や体力・知力等を持たせた子供の総称。親がその子供の特徴をまるでデザインするかのようであるためそう呼ばれる。デザイナーチャイルド(designer child)、ジーンリッチ(gene rich)とも呼ばれる。

今回発表された「デザイナー・ベビー」だが、ひとつ大きな特徴がある。新しく生まれてきた赤ちゃんは病気で苦しむ姉を救うために「選ばれた」子供なのだ。


■地中海貧血

今回、中山大学附属第一医院で「デザイナー・ベビー」を生んだ女性は2人。いずれも遺伝疾患の一つ、βサラセミア(地中海貧血)で苦しむ娘を持っている。

地中海貧血は遺伝子の異常により正常な赤血球が作られず貧血になる病気だ。治療のためには定期的に輸血を受ける必要があるが、「血荒」(輸血不足)で苦しむ中国だけに容易なことではない。広州市では赤血球濃度が80g/L以下の場合には優先的に血液を提供すると定めているが、80g/L以上の場合は親戚や友人が献血しなければ輸血を受けられない。広州市には地中海貧血患者の互助会があるが、子どもたちが輸血が必要な時、互助会の親たちが一緒に献血に行くのが重要な役割だという。

また定期的な輸血には副作用もある。血中の鉄タンパク濃度が高まりすぎるため、薬を飲まなければならないのだ。そのために1日13時間もの点滴をする必要があるほか、薬品代は月1万元(約13万円)に達する。広州市では地中海貧血患者に月3000元(約3万9000円)の補助金を提供しているが、とても足りる金額ではない。患者の多くは薬の量を減らすことを余儀なくされているが、体に悪影響がでることは避けられないという。


■「治療的試験管ベビー」


地中海貧血の根本的な治療には造血幹細胞移植が必要となる。その提供源のひとつがへその緒に含まれる臍帯血だ。

中山大学附属第一医院が新たに開発した手法とは人工授精した卵子を検査し、目的に合致した受精卵を選ぶというもの。選ぶ基準は2つ。第一に地中海貧血が陽性ではないこと。第二に姉に臍帯血を提供できるよう、ヒト白血球型抗原(HLA)型HLA型が一致していること、だ。他国ではすでに事例があるが、中国では初の試みとなった。

中山大学附属第一医院は「治療的試験管ベビー」と呼んで欲しいと話している。  


■倫理的問題

「デザイナー・ベビー」に付き物なのが倫理的問題。SF小説に出てくるような遺伝子操作の産物ではないとはいえ、複数の受精卵を作り不適格なものを除いていくという手法は、「人間の生命は受精した段階から始まる」という立場からはとても認められないものだろう。

また今回「デザイナー・ベビー」を出産した女性の一人は、これまでも娘を救うために3回も妊娠を繰り返していた。着床前診断を実施していなかったため、妊娠20週目の検査で子どもが地中海貧血と発覚し中絶している。着床後の中絶と子宮に戻す前の受精卵の選別、果たして両者に線引きは出来るのかという問題もありそうだ。

中国日報と捜狐網が実施したネットアンケートによると、半数弱が中山大学附属第一医院の新技術に反対している。自然の倫理に反する、誕生した「デザイナー・ベビー」は臍帯血の提供を拒否することができず不公平だというのが主要な理由としてあげられている。

一方で地中海貧血の子どもを持つ親にとっては希望の光になる、と広州市地中海貧血保護者互助会の何淑娟会長は話している。医療費が高額のため実際に試せる親は少なかったとしても、だ。

今回、「デザイナー・ベビー」を生んだ女性の一人はこう話している。「私は子どもたちに同じように接します。そしてこの秘密を一生涯伝えることはないでしょう」、と。

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