中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年08月09日
News Stand @ Beijing City / kevinpoh
■暴雨失踪者
先月北京市を襲った豪雨。公式には79人死亡と発表されています。ところが経済観察報は8月4日付の記事『暴雨失踪者』(リンク先は大紀元の転載)で、房山区で行方不明になった3人の名前を公表。
ところが、この3人が公式のリストに載っていなかったため、廃刊処分を受けたという情報が微博を駆け巡りました。
同紙は被害が大きかった北京市房山区を重点的に取材し、開発優先の姿勢が災害を大きくしたと指摘。公式には「721特大自然災害」なので、そういう指摘は当局的にはよろしくないのです。
郭金龍をはじめ、北京市指導部は4日に続いて6日にも房山区を慰問しました。また「短期的な経済利益が川の流れに影響する事は無い」と発言し、人災という観点を否定しています。
『暴雨失踪者』の記事はあちこちに転載されましたが、香港紙の鳳凰網まで削除されており、当局の敏感な部分に触れたことは間違い無さそうです。
北京市の排水システムにはかなりの予算が突っ込まれているはずなのですが、お偉いさんがピンハネしているため人災との声が高く、いつもなら呼ばなくても寄ってくる温家宝すら慰問に顔を見せない異常事態となっています。『経済観察報』北京豪雨の報道で処分(RFI 2012/8/7)
■廃刊処分の噂
経済観察報は山東省に本拠地を置く新聞ですが、同紙が他地域である北京で新聞を発行したため、北京市政府文化局の「掃黄打非」(ポルノ・違法出版物)取り締まり弁公室に違法な出版物認定を受けた、というのが表向きの理由となっています。
新浪微博には経済観察報の北京支社がある社屋に掲げられている、社名板が持ち去られたとして、その写真らしきものが出回っています。4日付の新聞は自主的に回収を命じられ、街中のスタンドから経済観察報の姿が消えたのは事実のようです。ネットでも当該記事のみ削除処分を受けています。ただ、同紙の経営陣が当局と手打ちをして、廃刊は免れたのでした。
暴雨報道で経済観察報廃刊の噂を北京市が否定(人民日報 2012/8/7)
7日夕方に、新浪微博に公式アカウントを持つ経済観察報が「廃刊はデマ」「運営は正常」と発表し、続けて人民日報もこれを報じています。何らかの処分は受けるでしょうが、首脳陣が入れ替わるなどの措置は取られないようです。
■敏感な時期
現在北戴河で現役常務委員や江沢民を筆頭とする、いわゆる長老が集結して次期常務委員を決めている最中であり、前出の通り温家宝すら近寄らない敏感なものとなっています。下手に突けばやけどをするというコンセンサスが彼らにあるのでしょう。
温家宝は洪水対策のために、北京市ではなく、黄河、長江のある河南省と湖北省を視察と露骨に北京を避け、そのまま北戴河入りしたと考えられます。
その敏感な問題に関わっている経済観察報の廃刊など迂闊に実行しようものなら、活動家が勢いづくなど面倒事が増えるわけですから、ネットに出回る廃刊騒ぎを打ち消そうと、わざわざデマ認定までしたのではないでしょうか。
ただ、今後も経済観察報が無事かどうかは保証できません。昨年7月に発生した、温州の列車衝突事故でも名前が出てきていましたし、いつ合わせ技で一本取られるかは分からないのです。デマがデマのままであり続ける保証は無いのです。
関連記事:
【写真】北京市を襲った豪雨=進まない「都市型水害」対策―中国北京市
【写真】豪雨で街中水浸し!長沙市でも「都市型水害」―中国
【干ばつ終了即洪水】村を飲み込んだ土石流=豪雨洪水の死者は94人に―中国南部
1年前に修理した橋が豪雨で崩落=洪水見物の観光客ら50人以上が死亡―中国
【写真】今度は成都が巨大水たまりに=四川省各地で豪雨―中国
「校庭が湖に代わった」豪雨の広西チワン族自治区で冠水被害相次ぐ
*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年8月8日付記事を許可を得て転載したものです。