中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年08月13日
■チベット人初のメダル獲得
今日は、このブログではとても珍しい嬉しいニュースを。
8月5日に「チベット人選手が初めてオリンピックに 金か!?」と紹介したチュヤン・キが、惜しくも金は逃したが、堂々の銅メダルを獲得してくれたのだ。よく頑張った、おめでとう!である。
APが伝えるところによれば、メダル獲得後のインタビューで彼女は「初めてのチベット人(記事では「Tibetan」との表記)としてオリンピックに参加でき、メダルを獲得できたことを非常に名誉と感じている」と語ったそうだ。
彼女も「チベット人」であること強く自覚し、頑張ったというわけだ。夜中の1時からであったが、日本のTVでも競技の一部始終が放映されたらしい。ツイッターやFBに実況中継を流すチベット好きの人も多かった。日本だけでなく、本土や世界のチベットファンが彼女を応援し、最後に大喜びしたことは間違いない。私のいるダラムサラでは、生憎全てを見る事ができなかったが、それでも、スタートと中程、ゴールのシーンは見ることができた。
■笑顔のチュヤン・キ
以下、ツイッターやFBに流れた写真やビデオクリップを幾つか紹介しながら、周辺事情を少し紹介してみる。
チュヤン・キがゴールしたところ。笑顔がすばらしい。嬉しかったのだ。タイムは1時間25分16秒。この時1位、2位、3位の彼女まで全て世界記録を破っていた。もちろん、彼女のベストタイムであり、アジア新記録であった。
彼女は国内予選では3位であり、このレースでも前半、他の2人の中国人選手が先を走っていた。彼女は前半は12位ぐらいであった。しかし、後半他の中国人2人を含めどんどん遅れる選手が現れる中、彼女は頑張った。どんどん順位を上げて行き、最後は前に2人のロシア人選手を残すのみとなった。彼女は後半3度のイエローカードを受けたので、無理ができなくなっていた。見ている我々も失格にならないかとヒヤヒヤして見守った。しかし、彼女は無理をするでもなく、笑顔を浮かべながらそのまま3位でゴールイン。素晴らしいレースであった。
レースは一周2キロのコースを10周するというもの。その折り返し地点には写真に映っているように大きくて目立つ雪山獅子旗(チベット国旗)がはためいていた。「チベットの国旗を見て彼女は微笑んだ」と伝えるフリチベ系のコメントも見かけた。が、これはひょっとしたら「顔が引きつった」可能性もあるかも?と思ったりだ。中国のオリンピック選手は出場の前に全員共産党員になることを勧められるそうだ。もちろん、これを断ることはむつかしいであろう。彼女も出場前に共産党員になっている。
このレースが中国でどのように放映されたのか定かでない。独自のテレビ曲が独自のカメラを使って放映していたのなら、必ずチベット国旗は映し出されないように工夫したであろう。一般配信の映像を使ったとしたら、否応無しに映ってしまったかもしれない。いちいちブラックアウトさせる訳にもいかなかったであろう。もちろん、チベット人やサポーターが彼女を応援しようと言う気持ちはよくわかる。この機会を使いチベットをアピールしようと考える人やグループがいるのも自然だ。が、彼女や将来のチベット人選手のことを考えると、微妙な気持ちにさせられたというのが正直なところだ。いつの日にか、チベット人が自分たちの国旗の下で頑張れる時が来る事を心から願う。
ゼッケン1387がチュヤン・キ。
■チベット人として
こちらの画像は公式結果の発表に少し手を加えたらしく、彼女はチベット国旗の下に頑張ったということになっている。
日本のNHKも彼女に注目し名前を上げてくれたようだが、名前は彼女の本名を中国語表記したものを音読みし「せつようじゅうしゃ」と言ってたようだ。これはかなわんと感じた@uralungtaさんがメディアへのお願いとして、ツイッターで以下のように呼びかけている。
お願いします:チベット選手の名前について中国人の名前は「原則は漢字音読みとし、漢民族以外は原音に近い音を当てる」内規でいらっしゃると思います。競歩女子20km銅メダルの選手「切阳什姐」はチベット出身で、名前はཆོས་དབྱངས་སྐྱིད་(Choeyang Kyi)です。チュヤンキ(チュヤン・キ)と呼んでください。
*漢字表記がそもそもཆོས་དབྱངས་སྐྱིད་(Choeyang Kyi)に対する当て字なので、「せつようじゅうしゃ」と音読みしても、本人の名前の元来の文字を尊重することにはなりません。
*チベット語の名前の綴り ཆོས་དབྱངས་སྐྱིད་ は、中国国営放送の地方メディアのチベット語サイト「青海藏语广播电视网站」などで確認されています。」