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中国に埋め込まれた時限爆弾=老朽化した小型ダムは4万基超に

2012年08月18日

2012年8月17日、南方都市報電子版は記事「4万基の小型ダム=「時限爆弾」は時を刻んでいる」を掲載した。


叠翠水库
叠翠水库 / ComerZhao

■決壊リスクを抱える小(Ⅱ)型ダム

8月10日、浙江省舟山市岱山県の沈家坑ダムが決壊。あふれでた水が下流の長塗鎮に流れ込み、民家などを押し流した。17日までに10人が死亡している。

沈家坑ダムは1977年に着工された、土製の小(Ⅱ)型ダム(ダム容量が10万~100万立方メートルのもの)。中国ではごくごくありふれた、普通のダムだ。中国全土には8万基のダムがあるが、うち小(Ⅱ)型は約半数を占めている。

2010年、中国水利部の陳雷部長は小(Ⅱ)型ダムの改修作業の重要性を訴えた。1950~70年代に建設された、これらの小型ダムは劣悪な施工とその後のメンテナンス不足できわめて大きなリスクを抱えているという。2010年の雨期には7期の小(Ⅱ)型が決壊した。1954年の初のダム決壊以来、中国では3515基のダムが決壊している。そのほとんどが小型ダムで、小(Ⅱ)型は小型ダム決壊数の85%を占めている。


■改修のネックは資金

現在、中国では4万6000のダムが問題ありと診断されているが、うち 小(Ⅱ)型は4万1000基を閉めている。

中国政府も手をこまねいているわけではない。2008年、国務院は「全国危険ダム改修専門計画」を公布。わずか3年間で620億元(約8060億円)を投資して7356基のダムを改修した。この計画は大型・中型ダムと東部地区の小型ダムを主な対象としたものだったが、2011年からは小(Ⅱ)型ダムを対象とした新たな計画が導入された。2013年までに1万5900基を改修。2015年までに残る2万5000基あまりを改修するという計画だ。

おそらく世界史上最大のダム改修事業だが、ネックとなっているのは資金。重点改修地点に指定されたダムの費用は国家が負担するが、それ以外は省と県が折半しなければならない。ある県には300基もの小(Ⅱ)型ダムがあるが、1基80万元(約1040万円)と試算しても省と県が1億元(約13億円)以上を支出しなければならない計算だ。

また小型ダムは養殖場などに使われていることも多い。改修作業には一度、水を抜く必要があるが、現地住民はその間の賠償を求めて抗議活動を起こすこともしばしば。妨害により改修チームが現地に入れないこともあるという。住民に対する賠償金は国家財政からは支給されない。

また僻地にあるダムの場合、工事車両が通る道すらないこともある。まず道路整備から始めなければいけないわけだが、もちろんその金は地方の自前になる。また重い工事車両が通行すると、農道が壊れると住民が反対するケースもある。

湖南省岳陽市のある官僚は「わずか5年で新中国成立以来50~60年間の積み重なった課題を解決しなければならない。人的資源、資金面ともに準備不足です」と嘆き、「現在、水利部局の職員はみな疲れて果てていますよ」と話した。

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