2012年8月21日、環球時報は記事「
火に油を注ぐ日米の島嶼奪還演習=日中の尖閣上陸騒動、平穏からなお遠く」を掲載した。
日米が初の島嶼防衛共同訓練 21日から、動的防衛力具現化
尖閣諸島周辺の情勢が緊迫感を増す中、陸上自衛隊は21日から9月26日の37日間の日程で、米第3海兵遠征軍(3MEF)が米グアム島やテニアン島で実施する島嶼防衛に関する実動訓練に参加する。対中国軍を念頭に、日米両政府が目指す「動的防衛協力」を具現化する動きだ。日本政府としては、実戦的な日米共同訓練で対中国抑止力の向上を図りたい考えだ。
環球時報記事は主に上記産経新聞記事を参照したもの。基本的には外電の紹介に終わっている記事だが、サイトトップページにでかでかとリンクをはっている。
これを大手ポータルサイト・
騰訊網が転載。しかも「日米が島嶼防衛合同軍事演習を実施=尖閣諸島の「奪還」をシミュレート」という、より煽り成分の高いタイトルにしてアクセスを稼ぐことに成功している。
騰訊網は中国最大のチャットソフト・QQなど多くのサービスを擁しているが、最近注目を集めているのが携帯電話向けコミュニケーションツール・微信(Wechat)。このソフトの初期設定アカウントに騰訊網のトップニュースを配信するものがあるのだが、上記転載記事も配信されている。
ニュースを読まない中国人もごまんといるのだが、一日2~3本しか配信されないこのニュースはついつい読んでしまうもの。というわけで、友人の政治興味ゼロの中国人も「日本と米国が手を結んで、尖閣奪還演習しているんだって!中国ヤバスギ!」と驚いていた。
スマホは便利は便利なのだが、パソコンのように情報収集するのはちょっと大変。送られてきたニュースを読むだけになりがちだが、中でも最近人気急上昇の微信=騰訊トップニュースはなかなかの伝播力をもっていて、あなどりがたしである。
■頭に血が上った日本は米国の陰謀に気づいていない?
もう一つ、興味深かったのが、同じく大手ポータルサイト・
網易が「美日举行护岛联合军演 模拟"攻夺"钓鱼岛」(日米が島嶼防衛合同軍事演習を実施=尖閣諸島の「奪還」をシミュレート)というまったく同じタイトルで記事を配信していたのだが、中身が全然違っている。こちらは中国広播網の記事を転載したものだ。激しく混乱するのでやめて欲しいのだが、秩序ゼロの中国転載文化の好例というべきか。
環球時報が外電紹介で終わっていたのに対し、こちらは軍事コラムニスト・梁永春の分析付きでなかなか面白い。ポイントをいくつかひろうと、以下のとおり。
・日本が何度もせっつくので、米国は尖閣も日米安保の領域と発表しているが、核大国の中国と喧嘩する気はゼロ。
・なので合同演習しながらも、日本に平和的解決を目指すよう忠告している。
・米国の支援はタダではない。尖閣問題を利用して、日本に対する軍事的コントロールを強めようとしている。
・日本人は尖閣問題でかっかしているが、後ろの米国が虎視眈々と狙っているのに気づいていない。米国は日本に対するコントロールを強化し、東アジアにおける主導権を樹立しようとしている。この点こそより警戒するべき事であろう。
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