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薄熙来夫人が死刑を免れたわけ=「紀律違反捜査の手がかり提供」という不可解な説明(水彩画)

2012年08月23日

■今さらながら、谷開来判決について■

*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年8月22日付記事を許可を得て転載したものです。


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Chongqing_2011 05 26_022 / HBarrison


■王立軍事件、薄熙来失脚とは


中国を支配する9人の老人たち、それが中国共産党中央政治局常務委員。今秋の18大(中国共産党第18回全国代表大会)で交代するわけですが、その有力候補の一人・薄熙来をめぐって今冬、大きな動きがありました。

腹心の部下であった「打黒英雄」王立軍が公安局長の座から外されたかと思うと、成都市の米領事館に逃げ込むという大事件が発生。重慶市からは追手の警察車両が大挙襲来し、領事館を包囲するという騒ぎに。両会明けの3月15日にはついに薄煕来・重慶市委書記が更迭される事態へと発展しました。その妻・谷開来はなんと英国人ビジネスマン殺害容疑で逮捕。今回、一審判決が下されました。

■シリーズ:「打黒英雄」の失脚と薄熙来の危機
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
カナダ首相と会見も……新華社に存在を消された薄熙来(水彩画)
解任の「打黒英雄」が米領事館に逃亡?謎の「休暇式治療」発表で祭りに(水彩画)
薄熙来失脚を狙う罠、黒幕は江沢民の政敵か?体制外メディアが報じる中国の政争(水彩画)
公安業務から解任された「重慶マフィア摘発の英雄」=「汚職で逮捕」との報道も―中国(水彩画)
「打黒英雄」の失脚は子飼いの部下を潰された賀国強の報復か―中国(水彩画)
「薄熙来は中国最大の偽君主」失脚した部下の公開書簡=重慶市トップ交代の観測も(水彩画)
重慶市長が装甲車を引き連れ殴り込み、団派の人事攻勢……王立軍事件の「謎」を考える(水彩画)
王立軍事件の行方=薄熙来は無傷で済むのか、重慶市政法会議を欠席(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来が辞表提出との噂=後任人事情報も飛び交う(水彩画)
【王立軍事件】薄熙来の独立王国・重慶市に湖南省武装警察が「進駐」―中国(水彩画)
【王立軍事件】王代表、全人代に「休暇願」=海外メディアの「荒唐無稽」な報道(水彩画)
【王立軍事件】「フォトショップで作った捏造画像だ!」重慶市市長、報道官がコメント(水彩画)
【王立軍事件】「重慶市は反省せよ」温家宝首相が薄熙来を批判―中国
【速報】【王立軍事件】薄熙来、王立軍解任=温家宝の痛烈批判の翌日に(水彩画)


■薄熙来夫人に執行猶予付き死刑判決

書いておかないと、2月からのシリーズは何だったのかと疑われそうなので。

前中央政治局委員で重慶市委書記だった、薄熙来の妻・谷開来による、「イギリス人ビジネスマン」ニール・ヘイウッド殺害容疑について。

薄谷開来、張暁軍に一審の判決(新華社2012/8/20)

司法鑑定の結果、「薄谷開来は完全に責任能力を有するものの、精神障害を患っており、本件の行為の性質と結果を識別する能力はあるものの、コントロールする能力は弱っている」との意見を発表した。

薄谷開来は逮捕後に関係部門に他人の紀律違反、違法行為摘発の手がかりを提供し、関係案件の処分に積極的な作用があった。

薄谷開来は法廷で罪を認め、罪を悔いており、薄谷開来に対する判決は死刑ではあるものの、すぐさま執行する事は出来ない。

というわけで、執行猶予付き死刑という判決になりました。執行猶予付き死刑とは不思議な量刑ですが、新たな罪状がでてきたりしないかぎり2年後には無期懲役になるというもの。事実上の死刑回避です。

気になるのは量刑を説明する文章で「他人の規律違反、違法行為摘発の手がかりを提供し」たと書かれている点。他人とは誰でしょう?薄熙来と言いたいところですが、夫のことを「他人」とは書かないはず。離婚したという話は聞かないので、元重慶市副市長・王立軍のことではないかと思われます。


■重慶市警察幹部4人に判決

重慶市公安局副局長ら4人が薄谷開来を匿った罪で実刑(新華社 2012/8/20)

ヘイウッドの死因は当初、急性アルコール中毒によるものとして処理されており、司法解剖されること無く火葬されていました。ただしヘイウッドに飲酒の習慣は無く、イギリスはかねてより再捜査をするよう強く求めていたのですが、薄熙来が健在の間は一顧だにされず。

薄熙来の解任と同時に再調査が発表され、谷開来と張暁軍が毒殺容疑で取調べを受けていました。毒殺の隠蔽を行った実行犯である、郭維国・前市公安副局長ら4人が谷開来と同じ安徽省合肥市中級人民法院で判決を受けました。「私利に惑わされ法を犯す」と罪状にあるので、谷開来から見返りがあったと考えられます。4人の肩書きは以下の通り。

郭維国 市公安副局長
李陽 市公安局技術調査総隊長
王鵬飛 渝北区公安分局長
王智徇 公安局沙坪壩区公安分局常務副局長

当時彼らの直属の上司であった王立軍は谷開来の犯行であることを知りながら、一旦は急性アルコール中毒が死因と隠蔽に加担しつつも、結局は薄熙来に谷開来の犯行である事を突きつけたために逆に薄熙来に切られています。

ただ、王立軍は公式には規律違反や違法行為では取調べを受けている設定ではないので、新たに調査が進んだことを示唆するものなのか、実は薄熙来と谷開来が離婚し他人となっており、薄熙来の規律違反について何らかの情報を提供したのか、私には分からないのです。

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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年8月22日付記事を許可を得て転載したものです。   

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