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2012年08月25日
■中国の落とし穴
2012年8月14日、ハルビン市。何の前触れもなく道路が陥没し、直径10メートル、深さ13メートルの大穴があいた。道で遊んでいた8歳の林玥彤さんは即死。その祖母の金貞淑さんは数カ所を骨折したが奇跡的に助かった。また親戚の赤ちゃんを抱っこしたまま通りかかった孫淑英さんも落下。孫さんがしっかり抱きしめていたため赤ちゃんは助かったが、孫さんは命を落とした。
こうした事故は中国では珍しいことではない。7月21日に豪雨にさらされた北京市では、それから3週間あまりの間に市内で100カ所で道路の陥没が報告されている。また2012年だけで道路陥没による死者は4人を数えている。
■原因は水道管の漏水、不十分な埋め戻し
地下鉄など地下での工事が原因となって陥没事故が起きるケースもある。だが専門家によると、水道管や熱水管などの漏水、または工事後の埋め戻しが不十分なことによるという。
まず前者だが、都市の地下にはさまざまなパイプが埋められているが、腐敗や水圧などの要因でパイプから水がもれることもある。漏れた水が周囲の砂を流し、泥に変えていく。それに道路を走る車の震動が加わって道路の下を浸食し、陥没事故につながることがあるという。
もう一つの大きな問題が工事後の埋め戻し。しっかりと土を突き固めなければ土壌は不安定になってしまうという。
■日本の経験
日本の陥没予防調査企業ジオ・サーチの富田洋社長によると、1987~88年にかけ、東京・銀座でも道路陥没事故が起き、社会問題となった。20年前、東京では年20~25回の陥没事故が起きていたという。しかし現在では大規模な陥没は年1件起きるかどうかというレベルだ。日本は1990年からレーダー技術を使って全国の地下空洞を調査。危険な空洞を見つけると、埋めるようにしているという。
また日本では陥没事故の責任者を明らかにしている。基本的には道路の管理者が主要な責任を負い、また水道管の管理者などもそれぞれ責任を負うことになっている。
だが中国ではいまだに陥没事故では誰が責任を負うのかを定める包括的なルールはなく、個別の案件ごとに話し合われている状態だ。上述のハルビン市の事故にせよ、2人の死者に誰が保証するのか、いまだに結論が出ていない。
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