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2012年08月25日
Day 71/365 Ironman / Alex of Gothenburg
■ナンチャッテ米中合作映画の横行
ナンチャッテ米中合作映画としてあげられているのは「エクスペンダブルス2」「アイアンマン3」 「ルーパー」「クラウド・アトラス」などのハリウッド映画。どこからどうみても米中合作しているように見えないのだが、中国企業に一部出資させ、中国っぽい要素をちょびっと加え、中国人俳優をひかえめに起用することで、米中合作映画の身分を手に入れようとしている。
なぜ米中合作映画になりたいのか、といえば答えは簡単。中国政府の映画輸入規制の網をかいくぐるためだ。自国映画を守るために中国はさまざまな規制を導入している。輸入映画には厳しい審査がかけられるほか、輸入できる総本数も決まっている。そればかりではない。興行収入に占める映画制作会社の取り分も従来は最大で25%と決められている。これをちょっと小細工して、ナンチャッテ米中合作映画の身分を手に入れれば、取り分は43%にまでアップする。
■ナンチャッテ合作はあきまへん
「ナンチャッテ米中合作映画はあきまへん」と怒ったのが中国国家ラジオテレビ映画総局の張丕民副局長。「ナンチャッテ米中合作映画の横行は中国映画にとって脅威でございます」と危機感をあらわにしている。「エクスペンダブルス2」「アイアンマン3」などにしてもまだ米中合作映画の肩書きを正式に手にしたわけではない。張局長の発言からすると、申請が却下されても不思議ではないムードのようだ。
なお今後は「中国企業の出資比率が3分の1以上、中国人俳優が主役、主な舞台は中国」という条件を満たさないかぎり米中合作映画とは認めない方針だという。
■ナンチャッテ規制緩和はあきまへん
強力な輸入障壁を築き自国映画産業を守る中国に米国映画業界は厳しい目を向けてきた。2007年には世界貿易機関(WTO)に提訴。2009年に中国の敗訴が決定した。今年2月、習近平副主席の訪米の手見上げとして、輸入映画の許可枠が従来の20本から34本に増やされるなど、映画規制の緩和が合意されている。
緩和されたとはいえ、強力な規制が残っていることは事実。習近平の手土産だけでは足りないということで、ナンチャッテ合作映画という道が摸索されたようだが、根本的な問題は解決していない。張副局長が「ナンチャッテ米中合作映画はあきまへん」と偉そうに話しているが、そもそも「ナンチャッテ規制緩和はあきまへん」という話をつきつめないといけないはずなのだが……。
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