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2012年08月26日
■意識のたかいブロガー@反中デモ
先日、元美人女子大生人気ブロガーのはあちゅうさんが「ブロガーとしての修行が始まった件」というエントリーをアップしていた。世界各国のブロガーが集まるイベントに参加した時のお話で、国際的なブロガーたちはいついかなる時もネタになる写真の撮影を忘れない。ホテルについたらまず撮影。メシが出てきたらともかく撮影。こういう人々が数十人集まるとなんともクレイジーな光景が展開されるという内容だ。
普通に笑って読ませていただいたのだが、思えば中国の反日デモにも、情報発信を忘れないWEB2.0な人々がごろごろしている。以下は2012年8月25日の山東省日照市の反日デモの写真。中国語ウェブメディア・FMNが動画と写真をまとめている(1、2)。
日の丸を踏みつけ燃やすシーン。周りではみな携帯を構えて激写。
広場でスローガンを叫ぶシーン。前には携帯で写真を写す人々の列。この後ろにも野次馬たちがおり、やはり携帯で撮影している人が多い。
■「蒼井そら」スローガンは武器
2010年の四川省綿陽市の反日デモで、ツイッターで実況してくれていた中国ネット民がいた(中国で連日の反日デモ=ツイッター実況を翻訳してみた<1>)。携帯一台でここまでできるのかと衝撃を受けたことを覚えている。あれから2年、携帯の性能も大きく向上し、高性能な携帯を持っている人の数も激増した。
それ以上に大きいように思うのが、SNS脳になった人々が増えているということだ。ちょっと面白いこと、ちょっと面白い写真をつぶやきたいと考える人が増えているのだ。マイクロブログやネット掲示板のようなオープンなサービスで注目を集めたいという人もいれば、人人網(mixi的なクローズドなSNS)や微信などで仲間うちで楽しみたいという人もいる。
こうした変化が反日デモのスタイルにも少し影響を与えているのでは、というのが私の推測だ。今回の反日デモでは「釣魚島は中国のもの、蒼井そらは世界のもの」というスローガンがあちらこちらで登場、話題となっている(反日デモにおける 蒼井そら 人気が異常な件)。
ジャーナリストの福島香織さんは「本当に反日の厳しい空気の中でなら、日本人女優に心うばわれているそぶりなど、冗談でもいえない。つまり、今回のデモの反日度はそのレベルなのだ」と評しているが、個人的には違うんじゃないかなと思っている。
SNS脳的な人々はトラディショナルなダサいスタイルではなく、ちょっと面白いことを言いたいのだ。以前からもちょっとひねりたいというニーズはあったが、WEB2.0時代の今、すなわち「誰もがネットで面白いことを言いたい」時代に、こうした発想が拡大しているのではないか。
さらに言うと、こうした「ちょっとした面白さ」は武器でもある。面白さこそソーシャルメディアでとりあげられる原動力であり、情報が拡散していく力になるからだ。例えば今年初頭の香港での中国人排斥運動なども替え歌を作ったり、ちょっとおかしい画像を作ったりして広められていった。
赤ちゃんの遺体が母親の隣に横たわっている写真で火が着いた強制中絶の事件、あるいは「ぼくのパパは李剛だぞ」と権力を振りかざした一言で広がった交通事故もみけしの事件。こうしたインパクトある写真や言葉と同様に、「ちょっとした面白さ」こそが従来以上の大規模なデモを生み出す可能性もあるだろう。
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