「帝王切開の際に腎臓を盗まれた。」中国マイクロブログの書き込みが話題となっている。
赤い靴はいていた女の子 / naitokz
景徳鎮洪源に新華医院がある。現地派出所はある女性の通報を受けた。曰く、先日同病院で帝王切開を受けたが、退院後どうも調子が悪い。エコー検査を受けたところ、腎臓が片方なくなっていることがわかった。すでに新華医院責任者は警察に逮捕されている。自宅からは現金180万元(約2340万円)が発見されたほか、移植待ちの腎臓9個も発見された。
というのが書き込みの内容。これを受け、騰訊網のまとめサイト「
今日話題」がデマ、デマ、アンド・デマと否定する特集記事を掲載している。
まず第一に子宮と腎臓は随分離れているので、帝王切開のついでに盗ることは不可能との医師のコメントを紹介。そして中国では「腎臓盗まれた都市伝説」が多々流通していることをとりあげた。
「大学生男子、色仕掛けに騙されてのこのこついていっては腎臓ロスト」「誘拐された子ども、腎臓を盗られる」「騙された女子大生、ホテルに連れ込まれて腎臓を二個とも盗られる」「お茶を飲んだら即昏倒、起きたら腎臓がなかったでござる」などを「今日話題」が紹介している。他にも「求職活動に行ったら連れ去られて腎臓を盗まれた」「この先の路地で先日殺人事件があったが、被害者の臓器はなくなっていた」などなど、この手の都市伝説には事欠かない。
■腎臓都市伝説の起源は英国
残念ながら(?)臓器移植の技術はまだまだであり、移植前には適合するかどうかなど厳しくチェックする必要がある。ざっくり腎臓をかっぱらっていっても何の訳にもたたないし、ましてや「帝王切開のついでに腎臓をゲット。売却先が見つかるまで保管していたら9個もたまってしまった」という状況はありえない。
米都市伝説検証サイト「snopes.com」によると、「腎臓盗まれた都市伝説」の期限は1989年にまでさかのぼれるという。1988年に4人のトルコ人が英国に行き腎臓を売ったが、その後金銭問題でもめた。翌1989年に腎臓を売った4人のうちの1人、Kocさんが英国を再訪したが、メディアの取材に「仕事探しのために英国に来たが、健康診断の際、採血の注射をされた瞬間に昏倒。起きたら腎臓がなくなっていた」とウソをついた。
これが世界的なニュースとなり、アメリカでは1991年にドラマ化までされるにいたった。その後、世界で同様の都市伝説が広がり、2001年にオーストラリアで広がったバージョンが中国で紹介された。
■中国と都市伝説の親和性もっとも中国では腎臓の違法売買はかなり蔓延しているとみられており、「iPad欲しさに腎臓を売ってしまった少年」などのウソのような本当の話もある。その意味では他国以上の信憑性があるとも言える。
「今日話題」は都市伝説自体はどこの国でもあるものと説明している。確かにその通りではあるが、中国では社会現象やら大事件につながるケースが毎年数件はある。例えば2009年の「新疆ウイグル自治区ウルムチ市でHIV感染者の血液を入れた注射針で通行人を刺す通り魔事件」などは、事実が確認されないまま、漢人のウイグル人に対する敵意を増幅させるものとなった。
13億人もいるんだから日本の10倍以上のペースでスーパー都市伝説事件が起きるという話でいいのか、それともデマが広がりやすい社会構造があるのか、素人考えながら後者に一票を入れたい気持ちではあるのだが……。
関連記事:
<ウルムチ情勢>死者5人、注射針テロに抗議の漢民族デモを当局が鎮圧「iPadが欲しかったから」17歳の少年、両親に内緒で腎臓を売る―中国湖北省ネトゲの最強装備が欲しいから!腎臓を売ってゲームに明け暮れた18歳少年―中国女子大生が殺害された、腎臓が盗まれていた?!都市伝説大国・中国大陸へ渡った日本の都市伝説=中国的稲川淳二怪談―北京文芸日記故宮の獣、恐怖の最終バス、赤いチョッキ……北京にもあった都市伝説―北京文芸日記