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2012年09月01日
Nepal Patan / ngotoh
インドからネパール経由でチベットに戻った、中国国籍を持つチベット人11人がネパールに追い返されるという事件が起きた。
今月29日、ネパールとの国境ダムでチベット人11人がネパールの警察官に引き渡された。1人はインドで勉強した後ダム経由でチベットに戻ろうとして拘束された。他の10人は今年始めブッダガヤで行われたカーラチャクラ法要に参加した後、インドの仏跡等を訪問し、ナンパラ峠経由でチベットに入ったが、国境警備隊に見つかり拘束された。
チベット自治区シガツェの拘置所に3ヶ月半に渡り収監され強制労働を強いられた後、11人は行き先も教えられないままトラックに載せられた。ダムに着く直前、チベット自治区政府の命令でネパールに帰されるということを知らされた。その際、中国の身分証明証を「もう必要ないだろう」と取り上げられたという。
彼らのうち6人は結婚し、家族をチベットに残す人たちである。元々亡命するつもりでチベットを去った訳ではない。カーラチャクラ法要に参加するために一時的に国境を越えた人たちであった。中国の身分証明証も取り上げられ、この先家族の下に帰ることもできないのかと途方に暮れているという。
彼らはカトマンドゥの出入国管理事務所に送られた後、国連難民高等弁務官事務所を通じ、チベット人難民一時収容所に送られた。
8月23日にも同じように5人のチベット人がネパールに送り帰されている。彼らも故郷に帰ろうと国境を越えた後発見され、シガツェの拘置所に4ヶ月以上拘留されていた。彼らは一時収容所から再びインドに送られたという。
参照:31日付Tibet Timesチベット語版、30日付RFA英語版
これまでネパール経由の密出国、密入国が見つかった場合、シガツェの拘置所等に数週間から数ヶ月拘束された後、それぞれの故郷に送られることになっていた。国境付近で見つからず、故郷まで帰ったときにはその地区の拘置所で拘留された後に解放されていた。
ネパールに追い返されるというケースはこれまでにないことだ。これが、カーラチャクラ法要に参加し、直ぐに帰らなかった者たちへの「もう二度と故郷には帰れないぞ」という嫌がらせなのか、帰還者への新しい方針なのか、はっきりしない。
一方で逆の動きもある。ここ数年間、しかも限られた人たちを対象にするものではあるが、亡命チベット人に対して、中国が短期、または長期の帰還ビザを発行することもある。
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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年8月31日記事を許可を得て転載したものです。