中国の大手製薬企業グループが「地溝油」(下水油)を使って、抗生物質原料を製造していたことが判明。話題となっている。
抗生物質 / iyoupapa
地溝油とは残飯、動物の皮革、レストランなどの廃油を使って製造された油を指す。名前からして残飯をメインに作られているイメージがあるが、摘発されたニュースを見ると皮革や廃油を使っているケースが多いようだ。中国では食用油の生産量よりも消費量のほうが多いという不思議な状況にある。数百万トンもの地溝油が流通しているゆえ、とも言われている。
2012年8月28日、寧波市中級法院で、地溝油を製造していた河南省恵康油脂公司の裁判が行われた。その中で大手製薬企業グループ・健康元薬業集団の子会社・河南焦作健康元生物製品が地溝油を購入していたことが発覚していた。2010年1月から2011年7月にかけて約1万6200トン。出荷量の過半数を購入していたという。
健康元薬業集団といえば中国では有名な大手メーカー。その子会社である河南焦作健康元生物製品はセフェム系抗生物質の中間原料となる7-アミノセファロスポリン酸(7-ACA)をを主力製品としている。米華字紙・世界新聞網の報道によると、日米欧など20カ国に販売されていたという。海外企業に飛び火する可能性もありそうだ。
8月31日、健康元薬業集団は公式サイトに公告を掲載。地溝油の利用を認めて謝罪するとともに、製品そのものには異常が認められていないと説明している。また市場価格よりも安く購入したわけではないこと、同社も地溝油だとは知らずに購入したことを強調している。
地溝油と聞くと、なんとも汚らしくいやなものに感じるが、驚かされるのは上手に精製された場合、正常に製造された食用油とほとんど見分けがつかないことにある。カビ毒や細菌が多いケースもあるが、具体的な健康被害もまだ報告されていない。今回の件に関しても製品に異常が認められていないということ。あるいは安い地溝油から安全な抗生物質が製造できることが証明されてしまうのだろうか。
もう一点、恐ろしいのは裁判が開廷されるまで、健康元薬業集団の地溝油利用の情報は伝えられず、使用した製品も回収されていないということだ。中国メディアがすっぱ抜いて報じたために広まったが、誰も報道しなかったらおとがめなしということだったのだろうか。地溝油製造メーカーだけ摘発して売却先の問題を対処しなかった中国当局、その怠慢も問題になりそうだ。
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