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2012年09月06日
■小学生全員にタブレットを配布
記事「
「すべての生徒にタブレットコンピュータを」激安中華パッドでデジタル教育改革―タイ(ucci-h)」で、タイの小学1年生、86万人全員に学校教育用のタブレット・コンピューターが配布されることをお伝えした。この8月より半数の生徒が使用を開始している。スコープ社という無名メーカーの製品で1台81ドルという代物だ。
タイ貢献党政府の政策はポピュリズム的で評判が悪いものは多いが、その中では評価は分かれるとはいえ興味深い政策と思われる。
実際、タブレット導入により、授業に興味を持つ子供が増えたというからけっこうなことだ。社会、算数、国語、英語、科学の5教科で使われているという。しかし、ここにきて心配された問題がやはり持ち上がった。タブレットのバッテリー切れである。
■ネックはバッテリー、放課後は教師たちの大充電大会に
以前お伝えしたように、タイ政府はすべて中国から学校向けタブレットを購入したが、教室内では「先生!オレンジ・マークが点灯して、バッテリー切れで消えてしまいます!」という声が増えているそうだ。バッテリーの残量が10%になると、オレンジ・マークが点く。
仕様では、充電5時間で6時間稼働するということになっている。情報技術省は品質をチェックしたとはいっているが、中国製のバッテリーのこと、額面どおりには受け取れないだろう(まあ中国製でなくても、公称の稼働時間は過大評価されているのが常だが)。タブレットには音声・動画など多くの教育ソフトが搭載されているので、それでなくともバッテリーの消耗は速いはずだ。
たんなるバッテリー切れ以上に深刻な問題がある。過充電防止機能がついていないというのだ。過充電で熱くなり、バッテリーの寿命をさらに縮めてしまう。
大変なのは現場の先生たちである。「家に持って帰って、毎日充電しておいで!」とも言えず、教室内に生徒の数だけ、コンセントがあるわけでもない。生徒の帰ったあと、充電作業にかかるというが、1教室40人も居たら一晩でできるのだろうか?タイマーとブレーカーを買ってきて過充電を防止しているという。
ある学校では、とりあえずタブレットの使用を一日1時間に制限しているという。
■激安中華タブレットのバッテリーは鬼門
教育現場からの声に対して、情報通信技術相は、「正式なレポートはまだもらっていないが、全部で86万台のうち、1%にあたる8600台に不具合が出るなら、至急手を打つが、まだそういうわけでもないだろう」と言っており、問題が広がるまで取り合わないようだ。
北タイのメーサイからビルマのタチレクにはいった市場には、タブレットやスマホなど多くの中国製電子機器が安く売られている。もちろん、コピー商品が中心だが、「デザインのよさにつられて、バッテリーの不具合には気をつけよう!」という我々の間での合言葉は今も生きている。バッテリーが切れたら、タブレットもスマホも役立たずだ。
ブランド・メーカー仕様のバッテリーでさえ、寿命が短いのに、さて、タイの学校の中国製タブレットはどう使われていくのだろうか?来月10月には、残りの半分43万台が配布され、初年度分86万台揃うことになる。来年度には、中学1年生向けに70万台が予定されている。
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年9月5日付記事を、許可を得て転載したものです。