中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年09月07日
Lanzhou, the dirtiest place in the world.. according to BBC.. / pawnbroker81
■政府批判ブログと国家転覆扇動罪
2012年9月、甘粛省蘭州市中級法院で、陳平福さん(55歳)の裁判が開廷した。容疑は国家転覆扇動罪。ブログのプロフィールによると、陳さんは蘭州市皋蘭県の国有企業所属学校の数学教師だった。2005年に会社の倒産に伴い失業。さらに大病を患い、子どもの大学進学も重なったことで、負債を抱えた。やむをえず陳さんは蘭州市街でバイオリンを弾く大道芸人として生計を立てたが、同市のホームレス・物乞い救助ステーションに侮辱され、追い払われたという。
そうした不満もあってか、陳さんは政府批判のブログ記事を書き続けた。起訴状は「2007年7月から2012年3月にかけ、被告人・陳平福は網易、百度、捜狐、時光網、新浪、天涯などのウェブサイトに陳平福のブログ・マイクロブログを登録し、34本の文章を発表・転載した」と指摘している。
「法に基づいた統治は一般市民ものだけを縛るはずがあろうか?」「エジプト人民に学べ、我々はもう巧言令色に愚弄されたくない」「独裁者を転覆させる角笛は吹きならされた」「偉大な領袖が登場すれば、その地の人民は必ず被害にあう」「民主と法治を否定すれば民族全体の負けとなる」「私は自分の祖国において、自らのしもべにいじめられた」「わたしたちの年代の最大の敵」などが問題のあったブログ記事のタイトルとしてあげられている。
■裁判所に駆けつけた人々とその影響
中国では即日の判決も珍しくないが、今回の裁判ではそうはならなかった。蘭州市中級法院では陳さんを支持する10人以上のネット民が傍聴しており、それが影響した可能性もある。裁判所側は当初、非公開裁判とする予定だったが、ネット民が交渉したこと、集まったネット民の数がそう多くはなかったこと、また陳さんが傍聴を認めなければ法廷にはいかないと主張したことから傍聴が許されたという。
国家転覆扇動罪がらみの裁判については中国国内で報道されることはまれだが、今回の裁判については財新網など複数の中国メディアが報道。大手ポータルサイトも転載し、高い注目を集めている。これだけ注目が集まっては裁判所も酷い判決を下しにくくなったと言える。
日本で紹介される中国人権活動家の活動というと、どちらかといえば華々しいものが多い。本サイトにせよ、その点では同様だ。ただ無名の大道芸人の裁判に駆けつけるような人々が存在し、それが一定の影響力を与えていることは留意しておくべきだろう。中国でも、ネットで注目を集めるような文章を書き続ける有名人よりも、具体的な行動を続ける人々を評価する人が増えている印象を持っている。
追記:
Lung-ta Project Japanが起訴事実と弁護側主張を紹介しています。
甘粛省の栄慶弁護士事務所の何輝新弁護士は、陳平福は無罪だと法廷で弁護した。何輝新弁護士によると、まず中国憲法第35条は中国公民の「言論、出版、集会、組織、デモ、示威の自由」を規定している。陳平福がインターネット上で発表した文章は、自らの境遇に即した文章を書いただけであり、またいくつかは転載であり、その目的は「現状への不満を述べ、心の中のうっぷんを晴らしたい」思いの表出を超えておらず、「デマを飛ばし誹謗中傷する」内容は存在しない。しかも現在履行されている憲法で公民が政府を監視する権利は与えられているのであり、これをどうして「国家政権の転覆を扇動し社会主義制度をひっくり返す」とみなすことができようか。さらには。政府と国家は同一ではなく、中国公民が官僚ないし政府を批判することと、国家政権転覆をはかることとを同一視するべきではない、としている。