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罰金、過剰徴税、そして税金前借り=ビンボーになった中国地方政府、「突撃徴税」で埋め合わせ

2012年09月10日

■罰金、過剰徴税、そして税金前借り=ビンボーになった中国地方政府、「突撃徴税」で埋め合わせ■


Currency: China - one yuan - FRONT
Currency: China - one yuan - FRONT / upton

今年8月、遼寧省瀋陽市の繁華街で、店が軒並み閉店しまるでゴーストタウンのようになったとのニュースがあった。来年の全国運動会の開催に向け資金を確保するために、店から税金や罰金を過剰に徴収するキャンペーンが
行われており、お上の訪問を恐れた店が閉店したという話だ(関連記事)。

いくらなんでも、政府歳入の確保のために罰金集めに精を出すというのはありえない話のように思われたが、その後も中国メディアは同様の話を伝えている。罰金だけではなく、税金の前払いやなんくせつけての過剰徴税、以前は「イラネ」と捨て置いた税金を今さらながら要求してくるといったことが横行しているのだとか。しかも遼寧省だけではなく、中国各地でこの「突撃徴税」は実行されているという。

この話題の記事の中でも特に興味深かった第一財経日報の記事を、ざっくりとではあるがご紹介したい。


■江蘇省、「いきあたりばったり」の徴税はせず

第一財経日報、2012年9月10日

税収の減少にどう対応するべきか。ある基層幹部は今年の業務についてこう話している。「やる。必死でやる」、と。なにを「やる」のか。それは今、流行の突撃徴税だ。

数えてみたところ、少なくとも10都市以上が突撃徴税政策を採用しているようだ。例えば(徴税できる)黒字企業を増やすために、わずかに赤字の企業を検査したり、あるいは現在の難局を乗り切るために所得税を前払いさせたりといった手法が登場している。典型的なパターンとしては(税務局員の)休暇取り消し、(企業などへの)処罰強化というもの。なんのひねりもない。

この徴税ブームがますます苛烈になるなか、江蘇省国税局は逆の動きにでた。22項目の税優遇政策を発表した。「返還すべきは返還し、免除すべきは免除する。もったいないと想う事はない。なにも歯磨き粉をしぼり出すように金をしぼりとる必要はない」。範局長はこう語っている。


◆「死ぬ気でやる」

今年に入ってから、米経済の回復は紆余曲折があり、また欧州債務危機の悪化も続いている。外需の低迷により中国の輸出入の減速も鮮明化し、影響は中国製造業に拡大している。

先週、HSBCが発表したPMI(製造業購買担当者景気指数)の速報値は47.8。この9カ月で最低となった。中国製造業産出指数の速報値は47.9。7月の50.9から落ち込み、ここ5カ月の最低を記録している。同時に新規輸出発注指数は44.7、41カ月の悪い値となった。

景気の低迷に伴い、税収も年20~30%の高成長の時代に別れを告げ、大きな落ち込みを見せている。

税収減にどう対応するか。工商、税務、衛生防疫、街道弁事処、都市管理局などの部局が次々とでかけては(税金や罰金を)集めていく。そうした中で一部地方ではお上を恐れて店や繁華街が一斉休業を決め込み、(お役人が休みとなった)夜に店をあけるという現象まで登場した。

あるアナリストはこう指摘している。一部地方が金集めに躍起になっているのは、ここ数年の大盤振る舞いになれてしまったためだという。しかも今年は政権交代の年とあって、一部地方の新指導者は着任後、すぐに巨大プロジェクトをぶち上げている。「1000億元と市開発」「1兆元構造転換」といったプランが喧伝されるのはもう珍しいことではない。ところがお財布にはお金がない。そこで(中央政府の唱える)構造的減税を建て前程度にやった上で、実際の徴税額は大きく増加するという事態となる。むやみな過剰徴税が深刻化しているのだ。


マルサの力は慎重に使うべし

実は江蘇省も突撃徴税に取り組んでいた。不動産、興業、金融などの大規模業界が重点対照だが、小規模企業とて例外ではない。同省財政庁のデータによると、今年上半期の財政収入は前年同期比12.9%増の2975億6000万元(約3兆8700億円)。税収が全体の80.7%を占めている。上半期だけで年間財政収入計画の過半を達成している。

しかし、こうした先の収入を食いつぶすような税収増はもはや限界だと江蘇省国税局は気づいた。各部局に割当を決め、金を取り立てるキャンペーン式のやり方では得るものよりも失われるものが大きい、と。

「経済が10%成長した時、税収は30%も40%も増える。これで成長と調和した税収と言えるでしょうか。これが未来を食いつぶす行為でないというならば、職権の濫用でありましょう」と江蘇省国税局の範局長は発言している。

範局長は最近の会議で、各自治体の税務担当者に、社会的価値の創造主である企業経営者を大切にするよう訴えている。彼らのためにゆとりのある徴税環境を作るべきであり、「いきあたりばったり」の徴税や暴力的な対応は厳禁だ、と。江蘇省税務局観察室は査察チームを結成し、基層自治体で違反がないか取り締まっている。企業の経営を妨害するような過剰徴税があった場合は厳しく罰するという。

「返還すべきは返還し、免除すべきは免除しよう。それではもったいないなどと考えるな。歯磨き粉を搾るように搾取してはならない。経済危機の時に企業に輸血しないとする。ならば瀕死になってから救急治療室に送るとでもいうのか。それでは代価が大きすぎる」

範局長の主導の下、江蘇省国税局は22項目の税収優遇政策を発表した。1800億元(約2兆3400億円)もの税金が払い戻されることになる。


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