中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年09月11日
scalpel / aesop
■医療ミス、驚きの言い訳
2012年8月17日、河北省保定市の楊さんは手術を受けた。そんな大変な手術ではないとの触れ込みだったが、終わってみると、なんと8時間もの大手術に。といっても本来の手術に要した時間は3時間。残る5時間は「メスの破片が楊さんの体内に落ちたっぽいので捜していた」のだという。しかも5時間もお腹の中を捜したのに結局破片は見つからなかったのだとか。
手術後、楊さんが医師を問い詰めると、「えー、またその話なの?」と医師はうんざりした表情。「あのね、あのメスいくらすると思っているの?数十万元もするんだよ。あなたのために手術したからあの貴重なメスが壊れちゃったんじゃないの。アンラッキーなのはうちのほうだよ。あーあ」という驚きの反応。
まあそんな言い訳で楊さんがごまかされるはずはなく、病院に賠償を求めている。病院側は3万元(約39万円)を提示したが、楊さんは拒否した。
同病院側は「(メスの破片が体内にあっても)大丈夫。間違いなく大丈夫です。たとえ調子が悪くなったとしても、それと破片は関係ありません」ときっぱりコメントしている。
■「炒作」という名の民間情報戦
とまあ、こういうニュース。記事は楊さん側の証言を軸に組み立てられ、相当盛られているとは思うが、面白いというか、興味を引く話であるのは間違いない。まるで全世界の新聞の三面記事ニュースに配信されるためにあつらえられたようだ。
もっともこの話を暴露した楊さんは世界の新聞読者を喜ばせるためにオモシロニュースを伝えているのではない。面白い=話題になる=病院側はこれ以上騒ぎにしたくないから折れる、という効果が期待されているのだ。中国では「炒作」と呼ばれる誇大報道が横行しているが、それというのも話題になることでなんらかの利益を得ようとする民間情報戦がやたらめったら発展しているため。
というわけで、このニュースの読み方としては、「ひどい病院もあったもんだ!」と激怒するよりも、「うぉっ、うまく作文したな。これはオモロイ。楊さん、勝てるんじゃね」というのが正しいのかもしれない。
関連記事:
「病院での違法追悼禁止」を中央省庁が通達=医療紛争と補償金ゴロと伝統観念―中国
病院の停電で母親が死んだ=遺族ら30人が棍棒を手に病院を襲撃―湖北省
お笑い動画で政府を倒せ!一般市民の武器「野次馬パワー」発動の構図―河南省
暴漢が女性医師をめった刺しに=患者・家族が暴力を振るう医療紛争が頻発―北京市
現地人と出稼ぎ農民の内戦=「暴力装置」としての同郷会―広東省