中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年09月14日
■中国は何をそんなにムキになっているのか?
11日から連日、北京の日本大使館前で、日本政府による尖閣諸島国有化に反対するデモが開催されています。
中国ではデモが起きてもメディアがスルーするケースが多いのですが、今回は当たり前のように報道されています。1日以来姿を見せていない習近平の「失踪」から注意を逸らすための煙幕との見方もあるようですが、それにしては出力が強すぎるような気がします。正直な話、国有化しようがしまいが「日本が尖閣諸島を日本領を詐称」していることに変わりはないわけで、中国が何をそんなにムキになっているのか計りかねる次第です。
8月下旬のデモは一定の自制が効いていましたし、メディアも抑制するよう呼びかけていました。ところが今回は煽りの鬼・環球時報が霞むくらいの勢いで、各メディアが「釣魚島は中国領」と煽り立てており、不気味なものがあります。
一応、習近平問題についても触れておきますと、いまだ「失踪」中です。ただ広西省自治区主任を務めた黄栄の葬儀がらみで、メディアに名前が載りました。北京ではなく広西チワン族自治区南寧市で亡くなったということで、電報を打っただけのようですが。
ただ党大会の日程を決める七中全会は9月20日に開催が決定しています。かりにここも欠席するようだと、李克強総書記という目も生まれてくるのではないかと思います。
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中国民衆、9月13日に駐中日本大使館前で抗議活動(人民日報 2012/9/13)
この人民日報記事をはじめ、中国メディアの反日デモ報道は事実関係のみを書き、デモそのものにたいする論評を避けています。国内のデモを報じ慣れていない、のではなく「デモをやっている」のを報じることが重要なのでしょう。
*「大勢の民衆が・・・」と恥ずかしいキャプションを付けられたこの写真は12日、北京市のもの。これは大勢のデモですね。警備の公安より多いといいですが。参加者は20~40人程度で推移しているもよう。
*こちらは合肥市での反日デモ。ロングショットだと規模がはっきりわかってしまいます。嫌がらせ写真ですね。
13日はもう少し増員したようですが、毎日新聞によると、循環デモというセコい手法を使って水増ししています。デモ参加者の数を抑えたいという当局の意図がわかります。ちなみに新華社は参加者を2000人超と報じていますが、延べ数ですね。さば読み半端ないです。小兵力を大兵力に見せかける三十六計の一つ、「樹上開花」というやつです。
中国:反日デモ、当局が巧みに統制(毎日新聞2012/09/13)
数十人の警官がデモ隊を監視しているが、抑え込む様子はない。デモを終えたメンバーの後を付けると、参加者は再び西側の出発点に戻り、次のデモに備えていた。同じメンバーが繰り返し大使館前を訪れ、同様のデモを繰り返していたのだ。出発地点には、大使館に投げ込まれている水が入ったペットボトルが大量に用意され、デモ隊の背後の支援組織の存在をうかがわせた。
中国国旗を身にまとったメンバーの一人は、黒塗りのアウディから降りて合流した。生活に不満を持つ庶民だけが参加するデモではなさそうだ。
現場にいた広東省の20代の中国人男性記者は「現場の混乱を避けるため、公安が100人以下のグループごとに歩かせていた。自主的どころか警察に統制されたデモだ」と解説した。
日中外交筋は「政府やメディアが日本への反発を強めている以上、デモ隊を完全に抑えるのは難しい。過激にならない程度に統制しながら、飽きるまでやらせるのが当局の本音だろう」とみる。