反日デモと日本車と車用の愛国ステッカーについて。
■愛国「有」罪?
2012年8月、香港活動家の尖閣諸島上陸を受け、中国各地で反日デモが起きた。その中でももっとも暴力的な騒ぎとなったのが19日の深圳市。日本車が次々とひっくり返され、さらには日本料理店まで打ち壊される騒ぎとなった。
11日、深圳市警察によると、深圳市検察院は容疑者4人の車両破壊、財産侵犯の容疑を認め、逮捕を認可したという。14日、羊城晩報が報じた。
「愛国無罪、つまり愛国的振る舞いであれば違法行為も無罪でおk、という話を中国が否定したのか!!」と驚きたくなる内容だが、その前にまず記事本文を抑えておきたい。愛国者の皆様の怒りを買わないようにと配慮に配慮を重ねた文章がおもしろすぎる。
警察は市民の愛国の熱意を理解し、市民による合理的な意見を支持する。しかし一部の人間は群衆を扇動し、他者の財産を侵害した。このような行為を許すことはできない。「愛国」に名を借りて違法行為を働くことは出来ない。市民は理性的にこの件を理解して欲しい。
ある警察官はこう話している。中国市民が日本車を買えば、それは市民の財産である。おそらくは長年の蓄え、血と汗で稼いだ金である。日本製品をボイコットしたいという願望から他人の車を破壊すれば、それは他者の私有財産を侵害する行為となる。市民の合理的な愛国の熱意の表明を警察は理解しているが、しかし故意に問題を起こす行為を見逃すことはない。一部の人間は群衆を扇動し、パトカーを壊させた。3台が被害を受けている。事件後、警察は調査を開始した。
基本的に愛国関係についてお小言をのべる場合には「市民の愛国心はすばらしい」という枕詞を付ける必要がある。それを付け忘れると炎上してしまう。(関連記事:「
尖閣に上陸した活動家は害国者」中国のホットイシューとなった「保釣害国論」を読む」)
また車が次々とひっくり返されたのに容疑者はたった4人。「扇動されただけの無垢な群衆」は無罪、扇動者だけが罪を問われるようだ。こういう場合、地元政府にとって都合の悪い人権活動家が扇動者とされてしまうこともあったりする。
まあ今回のニュースは「逮捕を許可」しただけの話。今後、司法手続きが進められることになるが、裁判はまだまだ先だ。この段階でニュースを流したのは、今週末(15日、16日)、そして柳条湖事件記念日(18日)に予定されている大規模デモを前に、「暴れすぎるなよ」と釘を刺す当局の狙いだろうか。
■愛国者避けアイテムがバカ売れ
さて、中国では「日本の家電の売り上げが急落」「日本車キャンセル相次ぐ」「旅行社の日本ツアー中止」などなど、「日本政府のおばかな行為と中国人民の愛国心によって日本はこれほどの経済的打撃を受けています」的ニュース報道が相次いでいる。家電や日本車、旅行を売っているのは中国人で、彼らの職を奪っているのだ……という反省が表に出てくるのはほとぼりが冷めてからになりそうだ。
そんな中で反日ビジネスをものにしている業界があるのだという。それが車用ステッカー業界だ。
東北新聞網によると、瀋陽市の販売店では「愛国ステッカー」がほぼ売り切れ状態だという。
「えー、中国の車乗りってそんなに愛国心爆発してるの!?」と早合点してはいけない。実はステッカーを買いに来た人の60%以上が日本車オーナーだという。デモ隊に車をひっくり返されないよう、愛国ステッカーを貼り付けておきたいということだろう。
中にはトヨタやホンダのエンブレムの上にべたりと中国国旗のステッカーを貼る人までいるというが、これは交通法の違反行為に該当するということで注意が必要だという。中国在住の日本人は護身のため、というかおまじないがわりに愛国ステッカーをつけてみてはどうだろうか。
*ネットショップで販売されていた愛国ステッカー。「車は日本車だけど、心は中国!」という言い訳じみた文言になっている。関連記事:
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