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2012年09月17日
■南シナ海の現状
尖閣諸島の領有権をめぐり、中国の攻勢が増している。経済成長がその理由だろう。さて、中国が日本と争っている尖閣諸島は東シナ海にあるが、中国が今、抱えているホットな領土問題はそれだけではない。広大な南シナ海では南海諸島をめぐり、ベトナムやフィリピンなど東南アジアの国々と争っている。
南シナ海には、大きく分けて、西沙諸島(パラセル諸島)、東沙諸島(プラタス島)、中沙諸島(西のマクルズフィールド・バンクと東側のスカボロー・ショール)、南沙諸島(スプラトリー諸島)の4つがある。
このうち、東沙諸島はプラタス島と比較的小さな環礁でできている。台湾に近く、台湾が国家公園を作り空港へ飛行機も飛ばしている。中国は領有を主張しているが、台湾が存在する限り、東沙はあきらめているかもしれない。
中国は、2012年7月に海南省の管轄のもとに「三沙市」を西沙諸島のウッディー島に作った。住民は1000人だそうである。西沙、中沙、そして南沙は自国のものだと言う主張である。もともと中国は、南シナ海全体は中国のものとしているから、いかに島々が、フィリピンやベトナム、またマレーシア、ブルネイ、インドネシアが存在するボルネオ島に近くても、自国のものだと実効化を強めている。中国は、もともとベトナムも沖縄も自国領だと思っているはずだ。
中沙諸島の島々は小さく人が住めるようなところはないため、フィリピン寄りのスカボロー・ショール(礁)では船を出し合って争っている。フィリピンに言わせれば、ルソン島の西124マイル、自国の領海200マイル以内の島だから、自国のもので問題ないと言っている。フィリピン大統領は、自国の領土を守ると言っているが、中国は引いていない。
西沙諸島(パラセル諸島)は、海南島とベトナムに近い。ベトナム戦争中の1974年、中国が攻勢をかけ、実質支配した。港と空港を作り、実質支配している。南シナ海で一番広域なのは、南沙諸島(スプラトリー諸島)である。地理的には、マレーシア、ブルネイ、またフィリピン、ベトナムに近いが、南シナ海の南部の群島なので、ここも中国が領有権を主張している。
■南シナ海の無人島、その価値とは
中国は74年、88年とベトナムと戦い、勝利し、南沙諸島の一部の島々を手に入れている。88年には南沙諸島北部の太平島に中華民国(台湾)が飛行場を建設するなど、領有争いは複雑化している。南シナ海の島々は、人が住めるほどの島もなく、いわば海に浮かんだ砂粒だ。
しかし、たとえ13平方kmの島でも領土となれば、周りの海200万平方kmが領海となる。漁業資源だけでなく、石油が眠っており、また軍事基地としての役割も大きい。中国は西沙諸島に作った三沙市まで、13時間かけて海南島から水を運んでいるという。
■分断されたアセアン
東南アジア10カ国で構成するアセアンでは、2012年7月のプノンペンでの外相会議でこの南シナ海での中国の攻勢に対し、共同で対処しようと試みた。しかし、議長国であるカンボジアが、経済援助を通じて中国に抱え込まれ、アセアンはまとまらなかった。45年の歴史上、はじめて共同宣言を出せずに終わった。
アセアンでは、カンボジアだけでなく、ラオスもミャンマーもそしてまたタイも中国の経済・軍事協力・援助を受けており、タイにしても領土問題には中立の立場を貫くなど、アセアンでまとまって中国に対抗することは事実上薄れている。アセアンは、中国により分断されたと見てもいい。
といって、アメリカがこの太平洋の西の果ての小さな岩礁に口を出して、中国につまらぬいちゃもんをつけられるのも好まないだろう。米国は中立を守るだろう。中国の海洋進出の意欲の強まりにより、南海の島々の領有は、早い者勝ち、強い者がちの様相を呈している。
中国に対抗するとなれば、日本、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどアジアの関係諸国が、対中国領土防衛同盟などを結び、この拡張的な大国に対抗するしかないが、そういったリーダーシップを取れる国はいるのだろうか。
なお、尖閣島の日本政府による国有化は、あまり巧みな戦術に見えない。中国は、口では中国の領土だというが、尖閣の日本の実効支配を黙認してきていたのだから、あえて国対国で構え波風立てるのも得策とは見えないがいかがだろう。
いっそうのこと尖閣に原子力発電所か沖合いの石油を利用した火力発電所を作り、中立の立場で近くを通るどこの国の船にもエネルギーを無料で分けてやったらどうだ?
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年9月17日付記事を、許可を得て転載したものです。