クローズアップ現代「
激化する反日デモ~中国とどう向き合うか~」(2012年9月19日)が興味深い内容だった。
クロ現のメモをとってみた
・映像でデモの説明編
暴徒化したデモに襲われた山東省青島市の映像。
青島イオンの社長がこれまで地元に貢献してきたのにとコメント。
北京市デモの参加者、日本製カメラも持っているし、日本文化も好きだけど今回のことは許せないとコメント。
・スタジオで毛里和子さんの解説
なぜ中国はここまで激化したのか?
→「国有化」が尖閣問題解決の最終手段であり、前例にない出来事と受け止められた。
→胡錦濤主席と野田佳彦首相のAPECでの立ち話。「強く反対、今すぐ購入はやめて」との申し入れがあっさり無視された
・録画での宮本雄二元大使のコメント
これまでとは違うところ
→中国の経済力向上で力関係が変化
→中国外交部が日清戦争とからめて尖閣問題を解説。領土問題と歴史問題の融合で困ったことに。
粘り強く交渉して知恵を出していくしかない。
・シメ 毛里和子
尖閣問題のアジェンダ化 → 領土問題として認めることが必要では。
■領土問題と歴史問題、愛国と領土問題の融合
宮本元大使の「領土問題と歴史問題の融合」も気になるポイント。日清戦争うんぬんはこれまでも言われていた(少なくとも馬英九台湾総統の持ちネタだったはず)ですが、中国外交部が全面的に持ち出したのは初めてということでしょうか。
宮本元大使のコメントと合致するのですが、中国ネット民の書き込みを眺めていると、「愛国と領土問題の融合はやばいって」という感想をみかけました。似たようなもんじゃね、ぐらいに思っていたのですが、中国の民草たちにとってはそれぞれ微妙に違うものが一気に融合されたという感覚があるのかも。
■中国政府の論理
もう一つ、興味深かったのが毛里さんのご指摘。「国有化」問題について日本側にかなり辛い採点をつけています。そも日本政府は「国有化」というと角が立つので「買収」と言っていたはずなのが、中国メディアも日本メディアも「国有化」を連呼。にっちもさっちもいかなくなったという……。
そも中国は前例を踏襲するかしないかのチェックは激しく厳しい国。2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事故でも「即釈放」の前例を民主党政権が踏襲しなかったために、あれほどの反発を見せたわけで。今回も前例を踏襲しなかった、日本側のチャレンジと評価されたとのこと。
そも日本国の土地の所有者がどう変わろうとも日本国の領土であることに変わりはないはずですが、毛里さんのお言葉によると「尖閣問題解決に国が全面に出てきた」と受けとめられたとのことで、そのすれ違いっぷりには絶望するしかありません。
また2012年の尖閣問題ですが、石原慎太郎都知事による買収提案以外にも、今春の「日本政府、領海の基点となる無人島に命名、尖閣の島嶼も含まれるの巻」、今夏の「日本議員、尖閣上陸を申請。日本政府はなかなか却下の姿勢をださず、中国メディアでは批判報道盛り上がり→香港活動家抗議船の出港へ」と、騒ぎの火種は積み重ねられていたことも抑えておくべきかと。
■本音と建て前
さて、反日デモの要因を考える時、民意なのか、それとも中国共産党内部の権力闘争と関連しているのか、という視点で話されているケースも多かったのですが、「胡錦濤の言葉も聞いてもらえずメンツが潰されたし、領土問題でこれほどの動きを見せたのだから、愛国という名の人民戦争モードで日本の譲歩を引きずり出してやる」という一番ストレートな可能性については軽視されてきたように思います。
その傍証になりそうなのが中国政府の態度。デモの暴動化を受け、「法に基づいた理性的な愛国キャンペーン」を大展開(いやなことを言うと、政府のキャンペーンに合わせて、デモの中には「理性的な愛国を」とプラカードを持った若者たちが現れたわけで。これをもって中国のネット民にも理性的な人がいると考えていいのか、ちょっと保留したいところ)。
また警官の配備数も増やして、九一八(柳条湖事件記念日)の反日デモを抑制しました。いや、瀋陽の日本領事館はガラスを割られまくる被害でこれも大問題なのですが、「これぐらいならおk」と感覚が麻痺してきたような……。
閑話休題。中国政府は暴動化を引きしめる一方で、さらなる対日制裁もちらつかせています。
反日モードはまだまだ継続中ということです。
■アジェンダ化という提案
毛里さんは尖閣問題のアジェンダ化、つまり日本も尖閣諸島に領有権紛争があることを認めるべきとの大胆な提案をしています。なんらかの譲歩がなければ、中国は収まらないとの判断があるのでしょうか。
個人的には今回の反日デモは中国の権力闘争が強く影響しているとは思いますが、その一方で建て前である「国有化許さまじ」というロジックも見逃せないのではないかと考えています。「中国の権力問題が片付けば反日も終わる」とは限らない。火種となった権力闘争が終了しても、ツールとしての反日モードは収まりがつかずにくすぶり続けるという困ったことになるかもしれません。
■蛇足:今回の尖閣問題が起きた理由、日本人の見方と中国人の見方
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もちろん 中国の肩を持つ訳ではないですが、
ああいう国なのを判った上で
もっと賢い判断を出来る人がいなかったのか?
本当に情けないです…
(中国の言いなりという意味でなく)