中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年09月23日
hong10 / Amber ZW
日本政府による尖閣諸島買収を受け、中国各地で反日デモが起きた。9月15日、16日の両日にはデモが暴動化した例が多数報じられている。
中国国民の怒りが政府によっても抑えられないところまできたとの見方もあるが、その後不思議とぴたりと収まった。また尖閣諸島に漁船1000隻が向かったとの話もあるが、地方政府から金が出ているとも伝えられている。
総合すると、反日デモは中国の政府のコントロール化にあると見てよいのだろう。反日という材料が反政府に転化・拡大するようならただちに抑制されることになる。
さて、今回の反日デモについて、中国の知識人はどう見ているのだろうか。私が住むタイの新聞に、バンコクでジャーナリストをやっている中国女性ツァン・チーさんのコメントが掲載された。中国の教育事情もわかるすばらしい内容なので、紹介したい。
■中国人女性ジャーナリストが語る反日デモ
中国の反日デモが多くの都市に広がった日のこと。バンコクでの買い物の帰りに、中国版ツイッターである「新浪微博」を携帯で見ていると、日本製品ボイコットの呼びかけを見かけた。寿司など日本製品をたくさん買った自分の買い物袋を見て、「私は愛国者なのかしら」と少し罪の意識を感じた。
もちろん、これはばかげた感情なのだが、自分は、中国の広い国土、音楽のように美しい中国の言葉が大好きだし、世界第2位の経済大国になったことを誇らしく思っている。
私たちがディアオユー(釣魚)島(尖閣諸島)を失いそうだと知った今、中国の歴史書にもはっきりと中国固有の領土と記されてきた土地を失いそうなことに対し、攻撃された感じと不安がとまらない(尖閣諸島は、1895年日清戦争後、日本にとられたと教えられているようだ)。
しかし、領土問題は政府同士が交渉すべきビジネスだから、政府間交渉に任せるべきで、国民がデモすべきことではないだろう。私にもっとも衝撃を与えたのは、人々が愛国心を表すそのやり方である。日本の店舗やレストランを暴力的に破壊するそのやり方である。私には、信じられず、恥ずかしく、憤慨すべき、悲しい事態だった。
そして気がついた。国を愛するように教えられては来たが、いかにいい方法で愛すべきかは全然教えられてこなかったと。デモ自体が悪いと言っているのではない。デモを悪用し、ばかげた振る舞いに転嫁することが悪いのだ。
中国では、愛国教育には事欠かない。70年代、80年代生まれの私たちには多すぎるくらいだった。小学校に入り、教わる歌は愛国歌ばかりである。「母国への頌歌」、「共産党なしには新中国はなかった」、「太陽は紅く、毛主席は最愛の人」などである。
学校で見る映画は、革命映画ばかりである。その中で悪者は、哀れであほで邪悪な、いつも日本人か地主である。ヒーローは、赤軍兵士、共産党メンバー、農民、労働者同胞となる。こういった独善的な刷り込みは大学までも続くので、大学の必修授業である、マルクス・レーニン主義のイデオロギーと共産党の主義・政策を教える「政治講義」を私はさぼったほどだ。
こういったものが多く教えられる一方で、市民としての権利をいかに要求し、使うかといったことは一切教えられてこなかった。前向きな姿勢で、合理的・平和的・合法的なやり方で、いかに価値や力を獲得すべきかも教えられていない。我慢して、交渉して、妥協する方法についても教えられない。他人の利益を尊重することも教えられていない。教えられたのはただただ「敵を倒せ!」ということだけだ。
従って、こういうデモが起こると、島の争いにはなんら貢献することなく、自国の経済をも損なうような暴力を生み出す。私たちは、感情的になり、暴力行為に移り、さらにネガティブな感情を増やし、結局ルールや社会正義を傷つけ、愛国とは関係ないところに収まる。
市民教育のないところに悲劇ははじまる。
■感想
という内容。中国という国が、国民に考えさせないドグマティックな教育を与え、生活の不満のはけ口を反日暴力など外に向けているとしたら、いつかどこかで行き詰まりそうだ。
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こんにちは。日本の新聞では、尖閣テロリズム問題を含む中国の反日テロリズムを尖閣問題、中国反日デモなどという言葉で報道しています。これは、言葉の遣いからして、全くの間違いです。さらに、「いじめ」に関しても、これは、多くの事例で、「いじめ」の範疇などとっくに超えており、「学校犯罪」という言葉を遣うべきです。これらは、言葉遣い一つの間違いでも、本当に大事な背景を見逃してしまうことになりかねないという良い事例だと思います。このようなこと、探せば他にもいくらでもあります。これは、新聞に限らず、テレビや、ラジオなどのマスメディアをはじめとして、あらゆる組織で、あることかもしれません。私たちは、言葉の本来の意味を意識して、意図して意識して、コミュニケーションを図っていく必要がありそうです。そう思うのは私だけでしょうか?あなたは、どうお考えになりますか?詳細は、是非私のブログを御覧になってください。