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2012年09月24日
チェンマイ名物カオソイ Khao Soi / Yasuo Kida
タイ王国の地方行政だが、全国76県(県=チャンワット)の行政は、中央から派遣された県知事によって担われている。県の下にある市町村の行政は、住民から選ばれた長が行なう。いわば二重構造となっているのだが、とはいえ、内務省から派遣される県知事が地方のトップであり、市町村はその下の執行機関に過ぎない。県知事が住民の選挙で選ばれるのは首都バンコク都だけである。
ちなみにタイの選挙結果を見ると面白い。北部、東北部は全部真っ赤というか、赤シャツ・グループが推したタイ貢献党がほぼ全議席をとり、中央部、南部は、逆にほぼ全部黄シャツというか、民主党議席であり、与党タイ貢献党の議員はひとりもいない。
もともと北タイのチェンマイは、長くランナー王国の首都であり、文化的にはビルマに近かった。現チャクリー王朝がたくみにランナー国をタイに取り入れたのは1930年代のことである。
こうした歴史を持つチェンマイでは地方分権運動が続いている。NGOや学会、地方行政職員など中心に地方分権を求めている。国防治安、外務、財政、司法は、中央政府に任せるが、健康保健、森林管理、資源管理、水管理、投資、観光などは地方に任せよという主張だ。現在、地方に配分される税収は全体の25%にすぎないが、この比率を70%にして欲しいと訴えている。
分権はたんに地方にのみメリットがあるものではない。現在の赤と黄色のにらみ合いが溶融され、国全体としてもバランスが良くなるだろうと訴えている。確かに地方ごとにもっとその地にあった行政が行なわれていいはずだ。特に教育などはそれぞれが競ったらいい。
しかし問題は猫の首に誰が鈴をつけられるかだ。中央政府が自発的に権限を地方に譲るなど、夢物語に過ぎない。しかも地方自治を求める動きにもかかわらず、草の根ではなく、エリート・リーダーたちだけの動きのように見える。
旧ランナー王国圏での地方分権が成功すれば、年金ビザの期間を4年にするとか、日本からチェンマイへの航空便を優遇するとか、日本人シニア誘致に細かい対応ができて面白いと思うだが、現実化はしないのではないいか。
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年9月18日付記事を、許可を得て転載したものです。