反日デモが一段落した今、次なる焦点となっているのが中国の経済的報復。日本経済にどれほどのダメージがでるのか懸念する人も少なくない。だが一方で中国では中国側の打撃を心配する声が強まっている。
Pearl river fire.. / Loco Steve
■日本を制裁したら、大事な外資企業がフィリピンにぱくられそうでござる?!
フィリピン、最優遇条件で中国から日本企業を引き込む方針
フィリピン貿易産業省のパンリリオ次官は26日、中国に工場を置く日本企業15社に対して、「最優遇の条件で誘致したい」と提案したことを明らかにした。「機に乗じて崩しにかかるわけではない」と強調している。
フィリピンは中国と製造業をめぐり競争を展開しており、今回、最も投資の可能性があるとみられる日本企業15社を引き込もうとしている。パンリリオ次官は、「日本人を助けたいだけだ。すでに中国に投資する日本企業と接触を始めた」と話したが、社名などは明かさなかった。「中国と日本の争いがなくても、中国の動労コスト上昇によってフィリピンの競争力は強まっている」と述べた。
日本企業の投資を誘致するために、パンリリオ次官は、日本企業に税政面での優遇や高等教育人材、安定した経済発展環境を提供すると表明した。アキノ大統領は汚職を一掃して良好な投資環境を提供すると公約している。
今日、上記記事が中国でちょっとした話題となった。原文は新京報の「
菲律宾拉在华日企转移投资」(フィリピン、在中国日本企業の移転・投資を取り込みへ)というタイトルなのだが、大手ポータルサイトの網易が「
菲律宾邀在华日企转移投资 否认乘人之危」(フィリピン、在中国日本企業の移転・投資を要請=危機に乗じたものではないと否定も)という刺激的なタイトルで報じて一気に拡散した。
網易のコメント欄には「まずフィリピンから滅ぼしたほうが良さそうだな」「フィリピンのバナナにまた品質問題が出るべき時だな」(今春のスカボロー礁のにらみあいで、フィリピン産バナナの品質になんくせをつけて通関を差し止めた問題を指す)といった期待通りの勇ましいコメントも並んでいるが、「日本製品ボイコットが成功すると思ってるやつはバカだろ」といったコメントも少なくない。
■日経新聞中国語版の大胆不敵な煽りコラム
日本経済新聞中国語版では同社編集局アジア部の村山宏次長がコラムを連載しているのだが、これがなかなか挑発的だったりする。9月18日付タイトルが「
中国抵制日货的可行性」(中国、日本製品ボイコットの実現性)。サプライチェーンがからみあった今の時代に日本製品排斥なんて無理という内容だ。
そして最新作、25日付タイトルが「
浮躁的中国抵制不了日货」(浮ついた中国には日本製品ボイコットは無理)とさらにワンランク、挑発レベルをあげている。まあタイトルは村山氏がつけていないかもしれないが、破壊力満点なタイトル。しめの一文は以下のとおり。
もし私が中国人ならばこういうだろうか。「街に出てボイコットを呼びかけても無理だ。もっとまじめに働こう。私たちの製品があらゆる日本製品を品質で上回れば、日本製品は自然と中国市場から消滅するだろう」、と
前回の炎上アクセスで味をしめたのか(?)、今回はより意識的に煽っているのがすばらしい。ある中文サイトに「日経は本当に日中友好を推進しているのか?」とスレがたっていたほどだ。しかもポータルサイトが転載する際に「
日本製品を上回って、中国ははじめて日本製品ボイコットができる」とさらに炎上しやすいようにタイトルをいじってくれている。
■対日制裁で実は痛い目に会うのって中国人じゃね?問題
日経中国語版ほど煽りモードではないにせよ、日本製品ボイコットが中国経済に与える打撃を懸念する声は少なくない。
例えば「日本ツアーを予約していた1万人がキャンセル」という話にせよ、裏返せばツアーを売っていた旅行社の損失であり、予定がパーになった中国人ガイドの被害であり、中国人向けに極悪土産物屋を開いている一部在日中国人の打撃であったりもするわけで……。
27日付ウォールストリートジャーナルの記事「
【オピニオン】空威張りの中国―自国の首を絞めるだけの経済制裁は恐れるに足らず」がこのあたりのロジックをきっちり紹介しているので、おすすめしたい。実は2008年のカルフール破壊でも、2010年の反日デモでも同じ議論は繰り返されているのだが……。
上記新京報記事のコメント欄でも「賢い人はボイコット効かないっていうけど、んなわけないだろ」などというコメントもあり、この手の議論が相当広がっていることをうかがわせる。
■「ボイコット=中国の勝ち」はなぜ定着したのか?
商売を無理やり打ち切れば、お互い損をするというのはごくごく当たり前の話であり、むしろ「巨大市場・中国を世界は欲しがっている。今の中国のボイコットは効くで!」というロジックがなぜこれほど広まったのかのほうが不思議といってもいいかもしれない。
日々中国ニュースを眺めている身として感じているのは、「巨大市場・中国は……」というのは中国発の情報というよりも、世界各国の「中国ビジネスが今熱い」記事が翻訳されて中国国内を流通した結果なのではないか。と同時に、「日本にボイコットは効くで!」というのも日本メディアが騒ぎすぎた結果という気もする。そうした日本の報道はやはり大量に翻訳されて流通しているのだ。2010年など経済制裁ネタは明らかに日本のほうが多かった。中国メディアの報道はむしろ日本メディアの後追いだったことを覚えている。
つまり、「海外からの視線が中国人の自己認識を作り上げている」側面が強い。今後も日本メディアが「ボイコット怖い、経済制裁怖い、日本経済やばい」と大合唱すると、それはそのまま中国の「ボイコットをするべき理由」に転嫁していくだろう。というわけで、日本を救うために大手メディアの皆様には「まんじゅう怖い」を唱えて頂きたい。
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中国国民の民意って言う時、
新疆やチベットの人達は同じ国民扱いを
全然受けていないのが明らかです。
日本に対してもそういう考え方で
接しているに過ぎない。