■2012年世界穀物価格上昇の年となっているが……■
2010年にロシアが干ばつとなった。国内の食料価格を安定させるため、ロシア政府は穀物の輸出を停止。それが世界的な穀物価格を高騰させ、途上国の独裁政権の政情を不安定化させ、ついにはアラブの春へとつながった……。
この指摘をしているのはフィナンシャルタイムズ(レコードチャイナ参照)。そして今年も異常気象が続き、2013年の穀物価格高騰はほぼ決まっているという。なんとも不気味な話だが、下記で紹介するチェンマイUPDATE記事は世界的な農業投資の増加により、穀物価格高騰は現在のところ穏健なものにとどまっていると指摘する。果たして農業投資は途上国の政権を救うのだろうか?Chinanews
2012年夏、米国の中西部穀倉地帯は、50年ぶりの旱魃に見舞われた。米国のコーンと大豆の3分の2を生産する中西部9州がやられたというから、穀物市況への影響は大きいはずだ。米国以外でも、東欧の小麦生産の穀倉地帯、黒海周辺のウクライナ、カザフスタンも乾燥した夏だったという。
この状況は、4年前、2008年の不作による穀物価格高騰を思い出させる。しかし、ここ9月まで、確かにコーン、大豆、小麦の市況は上がっているが、2008年ほどの高騰にはなっていない。また、穀物の“優等生”コメの価格はほとんど上がっていない。
(チャートは上が小麦、下がコメ。オメガ・リサーチより)
2008年の穀物価格高騰に懲りて、各国は、世銀によれば、生産性を上げるためなどに農業分野に多くの投資(2008年時の25億ドルに対し、昨年は95億ドルに)をしてきたと言われる。それと、2008年はリーマンショック前で景気は強く、原油価格も高騰していたのに対し、この2012年は、世界の景気は弱く、原油価格も落ち着いているのが、穀物価格の上昇を穏健なものに留めていると言える。
今年に入ってからの上昇率は以下の通り:
大豆・小麦・・・それでも、ほぼ45%アップ(大豆だけは2008年の高値を上回っている)
コーン・・・28%ほどアップ
コメ・・・年初来あまり上がっていない(+7%)
穀倉地帯の旱魃が今年だけであることを祈りたい。
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*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年9月28日付記事を、許可を得て転載したものです。