「日本はひそかに一人っ子政策を支持していた……。それは中国を滅ぼすための陰謀なのだ……」
Tiananmen / Bernt Rostad
■中国滅亡を画策する日本ののんきな陰謀
上述の主張をしているのは、独立人口学者を名乗るコラムニスト、何亜福氏のブログエントリー「日本人はなぜ中国の計画生育を支持するのか?」。2012年10月6日、騰訊網の特集ページ「今日話題」がとりあげている。
そのポイントを紹介すると、
・尖閣問題が劇化しているが、中国には「戦わずして勝つ」方法がある。日本の超低水準の出生率を長期にわたりキープすること。そうすれば移民を受け入れないかぎりいずれ滅亡する。
・一人っ子計画を主管する中国計画生育協会の2008年財務報告を見ると、家族計画国際協力財団(ジョイセフ)から4万8000ドルの資金を得ている。
・また一部の日本の中国問題専門家も一人っ子政策を支持している。中江要介・元駐中国日本大使は「一人っ子政策は緊急避難的な政策」だと擁護している。ならば中国よりも人口密度が大きく、一人当たり資源が中国よりも少ない日本はなぜ出産を奨励しているのか?
→中国と日本の出生率はともに超低レベルにある。長期的にみれば、出生率が高い国が最終的に勝利する優位を持つ
というもの。
ブログ記事では日本の陰謀だとは言い切っていないが、
「中国を滅ぼすための日本の陰謀とおバカにもその罠にはまった中国政府」というふうに読めるし、ネットの反応を見てもそう受け取っている人が多いようだ。日本はこれほどの深慮遠謀を持っていると評価していただくのはありがたいが、さすがに悠長すぎるのではないだろうか……。[
とはいえ、荒唐無稽とばっさり言えない部分もある。というのも一人っ子政策のような人口抑制政策は中国の独走ではなく、先進国の働きかけによって作り出された世界的な風潮であったからだ。ここでは詳述は避けるが、『
女性のいない世界 性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ』がこの点について詳しい。
■ボクのほうがもっとうまく反日できるんだ
「
反日デモをしていたはずが、気づいたら反政府になっていたでござる」
というのが中国にとっての急所。むやみに反日を扇動すればその火は自分の身を焦がすのだ、とはよく宣伝されるところ。
ただ、「反日から反政府へ」というのはたんに集まって騒いでいたら大変なことになった、というだけではないことは抑えておくべきだろう。上述のような「日本の悪魔的陰謀とそれを見抜けないお馬鹿な政府」というのも一つのパターン。一人っ子政策という中国政策の現行政策が批判が反日と結び付く、ステキな論理的飛躍がそこには存在している。
それから、できた政権が民主政権であれば、なおのこと民生に力を注がなければならないので、人権や国際法を無視した排外主義を政権維持の支柱にする可能性は小さいような。
あくまでも、可能性論の話ですが。