中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年10月09日
最近中国では釣魚島釣魚島とさわがしいことで大変です。日本では例の反日デモも官製デモだなんだと言われているみたいですが、あれが中国共産党による「民衆の怒り」を演出するための動員であったとしても、あそこまで広い範囲での行動はありえないでしょう。
やはり大衆動員にはプロパガンタが欠かせないものであります。突発事態のように思われていることでも実は仕込み十分だったりすることはよくあるものです。
■解説「一八九四甲午大海戦」
ということでここで紹介するのは今年の夏7月6日に公開された映画「一八九四 甲午大海戦」。
公開当時駅の待合なんかでも頻りに流しており、立派な海軍を作りたいという宣伝なんだろうなぁとおもってたんですが、そんな甘いものじゃありません。尖閣問題の中国側の主張は「日清戦争のときに盗みとったのだからポツダム宣言で返ってくるべきもの」というのですが、この映画はまさにその筋にそっています。
伊藤博文「日本が生きのびていくためには国土を広げる必要があります。北は朝鮮と遼東半島、南は台湾と澎湖列島を手にいれる必要があります」
まぁつまり日本は清から領土を奪うために海軍をつくりあげたといいたいわけですね。
山県有朋「ここに日本の拠点をつくれば中国の腹部に刀をつきつけたも同然」
井上馨「中国の釣魚島を領土にいれたいわけですね。しかしいくら調べても日本の領土だと証明するものはなかった。この件は慎重にする必要がある」
あんな小さな無人島が重要な軍事拠点の可能性を秘めていたんですねー知りませんでした。さて一方清の海軍もできあがります。
丁汝昌「李中堂(李鴻章)の命令で、釣魚島、台湾、東沙、西沙、南沙を巡遊する」
でまぁその後釣魚島の側を通ったという場面があったりします。なかなかおもしろいルートですね。さて戦争がはじまり清の海軍がボロボロになります。
野村靖「今清国が混乱しているスキに釣魚島を奪いとりましょう」
陸奥宗光(三浦研一)「全世界に宣布し、尖閣と名付けましょう」
ちなみにこの画面の左にいるヒゲ面が明治天皇です。蛮族の首領みたいな豪快果断さを発揮しています。
さて下関の講話会議です。
伊藤博文「ここは魚市場ではありません。本来なら東北三省と山東、河北、江蘇、福建、広東みな日本のものになるはずですが、日中友好を考え、(朝鮮遼東台湾割譲で)譲歩しているのです。呑んでもらえないのならあの艦隊で北京を攻めおとしますぞ」
小国の分際でここまで高圧的だったんですねーむかつきますねwww
「敗北の16年後武昌起義によって最後の封建王朝が倒れ、その60年後、中国は第二次世界大戦において3600万人の犠牲をもって日本に戦勝し、台湾澎湖列島および釣魚島を含む付属諸島を祖国の版図にとりもどしたのであった」
■抗日物の変化
全体に中国が被害者の立場にたつように構成されています。
長崎事件なんかも侍の格好をしたやつがいいがかりをつけて暴行したということになっています。まぁ「支那浪人」を映像化したらなぜか侍になっているという抗日ドラマでよくみるパターンですな。イギリスの海軍学校での日本人と中国人の微妙な感じなんてのも「雪豹」という抗日ドラマ(ナチスの軍官学校で同窓だった日本人と中国人が敵になり南京戦をたたかう)を彷彿させるものがあります。
史実?いやいや抗日モノに史実なんか関係ないんですよ。実三虚七ってやつですかね。本来中国でつくられる抗日物は「中国共産党の指導する正しい戦い」を描くものですが、最近は単に「中華民族をおびやかす日本の侵略との戦い」に範囲が広がっているようにおもいます。
■タイミングが良すぎるプロパガンダ映画
この映画が公開されたのは2012年7月6日ですが、2011年の初めには撮影がはじまっています。ネット上で情報をさがすと2012年の5月になってようやく公開の予定がでてきています。石原都知事による尖閣購入の話がでたのは4月中旬ですが、その後ですね。
2月 王立軍事件
4月中旬 尖閣購入の件が公にされる
7月4日 全家福号尖閣水域に入る
7月6日 「一八九四 甲午大海戦」公開
8月15日 香港の活動家尖閣に上陸
8月19日 日本の活動家上陸
8月20日 「中国青年報」に「砸日货蠢行害国 勿让爱国变暴行遮羞布」
9月9日 アセアンで野田-胡の非公式会談
9月10日 尖閣国有化を閣議決定
9月15,16日 中国で広域な反日デモと暴動
9月17日 禁漁明けの漁船出港(いわゆる1000隻出港)
9月19日 北斗導航システム用の追加の衛星打ち上げ
9月23日 27日の日中国交回復40周年の記念式典を中止
9月25日 空母遼寧お披露目