■西安市デモの重傷者が公安相手に訴訟■
*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年10月12日付記事を許可を得て転載したものです。
*写真は染小柒777さんが公開した現場写真。
■反日デモで頭蓋骨を割られた中国人
陝西省西安市。51歳の李建利さんは頭蓋骨骨折の重傷を負った。トヨタのカローラに乗って反日デモの前に飛び出してしまい、袋だたきにあったという。
9月に中国各都市で発生した「反日デモ」。その最初の重傷者となったのが、9月15日に西安で起きたデモの参加者に暴行を受けたカローラのオーナー、李建利でした。2005年の反日デモも同様の事件がありましたが、車をボコボコにされてオーナーの女性が泣くだけで済んでいたのですが、今回は鉄製のU字ロックで頭蓋骨をカチ割られ、右半身が麻痺する後遺症を負ったのです。
李建利夫妻は「庶民が稼いで買った車です。私たちが日本車を買ったのは悪かったです。次はもう買いませんから」と許しを請うたものの聞き入れられず・・・という最悪の展開に。
■中国の野次馬たちとその冷たさ
この暴行事件には、中国特有の「囲観」に問題もあるとか何とか言いたくなります。囲観とはいわゆる野次馬が周囲を取り囲んで成り行きを見守っている状態で、どちらかに荷担するわけでもなく、事態が一段落してやっと動き出すのが特徴的です。
事件もオーナーが頭から血を出して、「一段落」したと判断されてようやく通報された、タオルが投げられたのかもしれません。もちろん凶器を持ったおっさんを止められない恐怖もあったでしょう。日本車のオーナーを助けてしまえば、「あちら側の人間」と判断されますし、日本車を所有できる金持ちに嫉妬する貧乏人のやる事ですから、金持ち側に回るのは得策ではありません。
「囲観」に参加していた群集の心理は憶測で書いているですが、大きくは外れていないと思います。こうした暴行は2005年の反日デモには見られなかった現象で、結局後ろ盾が誰なのか分からなかったのですが、組織化していないのも一因なのでしょうか。
■犯人逮捕と警察の「不作為」
脱線しました。15日の反日デモ暴徒化を受け、西安市は中国国内でもいち早くデモ禁止の方針を打ち出しています。李建利さんの事件についても、西安市公安局が容疑者の顔写真を公開し、懸賞金まで出すことになり、あっという間に犯人逮捕にこぎつけたのです。
犯人は死刑になる可能性があるとも伝えられる中、どういった落し所になるのか注目していたのですが、その前にちょっと意外な展開になりました。被害者である李建利が犯人ではなく、西安市公安局を訴えたのです。
集会・デモ活動法によると、デモの申請審査を行うする(西安市)公安局の職責として、デモの前に詳細な準備と、市民が秩序あるデモを保証するよう必要な警備を配備すべきだったとなります。
また、治安管理処罰条例では、公安は治安維持機関として市民の安全を守る必要があると規定されていますし、最高人民法院の司法解釈では、デモの中で起きた財産や人身の被害については、地方政府、または関連部門に行政訴訟を起こせるとのこと。法的根拠はあるようです。
公安は2005年のデモからずっと「囲観」をやっていたのですが、ついに民間から訴訟という手法で批判を受けた形になります。
数で完全に負けている公安がヘタに手を出せば反撃を受け、武装警察の投入を招きますから、事態の悪化は避けるよう指示されていたでしょうし、今回のように参加者の写真を撮って後から各個撃破していくのが常です。
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*本記事はブログ「中国という隣人」の2012年10月12日付記事を許可を得て転載したものです。