「愛車を持てる人、ミドルクラスは暴徒化しない(キリッ」「ボク、デモに参加したけど、そんなに貧乏じゃないよ」というやりとりが朝日新聞デジタル中国語版で展開されている件について。
UNIQLO building / achimh
■反日デモ参加者=ビンボー
という楽しいやりとりが見られるのは朝日新聞デジタル中国語版の記事「中国的民意并非只有一个」。「中国の民意、一つじゃない ジャーナリスト・安替さん」の中国語訳だ。登録すれば無料で読めるのでぜひぜひ読んでいただきたい内容だが、コメント欄で軽く炎上した内容、すなわち「反日デモ参加者=ビンボー」に関する部分を抜き出すと以下のとおり。
(反日デモの)参加者は、日本車も持っていないし、セブンイレブンやユニクロでいつも買い物をしているような収入を持たない人たちが中心。学校が週末に授業をしたりして止めたので、大学生は少なかった
誰かにあおられて参加した貧しい人々は、この機会に積もり積もった憤怒を『仇富』として、暴力的に表現してしまった。しかも、本当に大金持ちの特権階級ではなく、普通に生活しているミドルクラスをたたいた。中国社会の悲劇だ
戦後、民主的で平和な国を目指すと決めた日本はアジアに安全をもたらした。自由で豊かな社会を戦争で犠牲にすることは難しいからね。中国も同じで、日本のように自由で、多くのミドルクラスを抱える中国になっていけば、日本にとっても長期的な安全保障となるはずだ
■コメントのプチ炎上
この安替のインタビューに怒りの反論コメントがいくつか寄せられている。
日本車、セブンイレブン、ユニクロがそんなに高級か?デモには自発的に参加し、平和的に怒りを表現した良識ある人も多くいた。分かっているのか?この種の狭隘な見方は読者を誤解させる。
安替の意見は代表的とは言えない。私は2005年のデモに参加している(し今年のデモに参加している)。今年の深圳のデモは同窓会のチャットグループで企画したもの。私は低所得者ではない。あなたが何を代表している話しているのか、さっぱりわからない。不思議だ。
日本人すらおまえのことをバカにして笑っているだろう。ユニクロが高級だと?!HAHAHA!
日本の在特会も知識や学歴がない、「仇富」(金持ち憎悪)の人々ではなかったか。中国人のことだけ言うべきではない。
おまえと暴徒の共通点はどちらも中国人を辱めたことだな。
安替よ、日本人はおまえに「著名なオピニオンリーダー」と肩書きをつけている。私にはおまえが日本人に飼い慣らされた犬のように見える。
とまあこんな感じ。もっとひどい罵り言葉もあったが自粛している。ただコメントの数はたいした量ではない。というのも朝日新聞デジタル中国語版がまだまだ無名な為だ。この記事が中国のポータルサイトにでも掲載されれば、爆釣は間違いないはずだ。
なお、「ユニクロってそんなに高級か!」というツッコミ・コメントは誤訳に基づくもの。原文は「セブンイレブンやユニクロでいつも買い物をしているような収入を持たない人たちが中心」なのに、「主要是以那些不具备常去711和优衣库购物的收入水平的人为主」(主にセブンイレブンやユニクロに行く収入を持っていない人々が中心)と真逆の意味に中国語で訳されていることも指摘しておく。
朝日の翻訳スタッフには猛省を促すとともに、金鰤への業務委託をオススメしたい。 追記:ツイッターやコメント欄で指摘されましたが、「セブンイレブンやユニクロでいつも買い物をしているような、収入を持たない人たち」(セブンイレブン、ユニクロで買い物=金持ち)、「セブンイレブンやユニクロでいつも買い物をしているような収入を持たない人たち」(セブンイレブン、ユニクロで買い物=貧乏)と2種類の読み方ができる日本語ですね。文脈に沿うならば後者、つまり中国語訳が正しいことに。でもユニクロはともかく、セブンイレブンってだいたいの商品が地元の小商店と値段が変わらないような……。
■中国の民意、一つじゃない
さて、上記で紹介したコメントをどうとらえればいいのか。
「一般人が存在すら知らない、朝日新聞デジタル中国語版のコメント欄にまで五毛党はわいてくるのかよwww」(五毛党とはやっすいお金で政府支持のサクラコメントを書き込むバイトくんを指す)と一蹴する人は多いだろうし、それであながち間違っていないのかもしれない。
安替は自分もかつては反日感情を持つ「憤青」(憤怒する青年)だったと話しており、2005年の憤青が2012年にはミドルクラスとなったという変化は彼自身の変化と言ってもいいのかもしれない。
その意味ではよく分かる話なのだが、安替の描くストーリーから結構こぼれて落ちている人もいるのではないかなとも思ったり。「中国の民意、一つじゃない」という言葉通りに、だ。
■わーたーしーはやってないっ
反日デモの暴徒化について、中国の良識ある人や、それこそミドルクラス以上の持てる人に話を聞けば、格差社会の犠牲者であるビンボー人、その象徴的存在である外部から出稼ぎ労働者だという答えが返ってくることが多い。
実際、逮捕者の事例をみるとそのとおりだったりはするのだが、「(俺らとは違う)ビンボー人のやったこと」「(この街の住民じゃない)他の地域の人間がやったこと」という答えを聞くと、ちょっとむっとしてしまう。なんか良識ある中国人って日本に対し、「中国のことをもっと知ってください」とか言うくせに、今回の反日デモについても他人事っぽく日本人に寄り添う発言とか見たことがないのだが、その根底にあるのは「中国政府も暴れた末端の暴徒もうちらとは違う存在」と思っているからじゃないの、と思えるのが残念なのである。
【反日デモ】私たちは愛国と敵を倒すことしか習わなかった=ある中国人女性の言葉(ucci-h)【中国斜め読み】反日デモは都市民に差別された第二世代農民工たちの叛乱だった他(ujc)【反日デモ】毛沢東を知らない若き毛沢東信者、毛沢東を罵る老人を殴る―中国【反日デモ】ボクが経験した反日=日本大使館の前を歩いてみた―中国【反日デモ】トヨタ車に乗っていたら頭蓋骨を割られた=反日デモ初の重傷者は中国人
翻訳の方のように解釈することは、文法的には可能だ。
中国人と仕事をしていれば、彼らはこういうどちらにも取れる状況で更に一段深く考えて緻密な仕事をするということを、まずやらない人達であることに誰でも直ぐに気付くし、それを念頭に置かなければ彼らとの協業は上手くいかない。
朝日のコラムを書いた記者は、大先輩である本田勝一の書いた「日本語の作文技術」を熟読して、日本語の典型的な悪文のパターンを知るべきだ。