韓国海上警察官が中国漁民を射殺してしまった件で、日中の尖閣問題にも影響がありそうな件について。
■恒例の中韓バトル、またも勃発
中国船員、ゴム弾受け死亡=黄海で取り締まり中-韓国
時事ドットコム、2012年10月16日
韓国南西部・全羅南道の紅島沖の黄海で16日、韓国海洋警察が違法操業中の中国漁船を取り締まり中にゴム弾を発射、中国船員(44)の胸に当たり、船員は死亡した。
(…)16日午後3時ごろ、韓国海洋警察の警備艦が紅島の北西沖90キロで違法操業中の中国漁船約30隻を発見し、取り締まりを開始。船員たちが刃物やのこぎりを振り回し激しく抵抗する中、漁船2隻を拿捕(だほ)し、船員を拘束した。
という話。黄海の排他的経済水域(EEZ)については「等距離で分割するべし@韓国」と「大陸棚が伸びているのでうちのほうが多めにいたたくでござる@中国」で主張が対立しているが、しかし紅島から北西90キロは中国の主張が全力で認められてもやはり韓国のEEZなのではないかと思ったり。
他国のEEZに入り込んで違法操業した揚げ句、海上警察に捕まりそうになったら武力で抵抗する中国漁民。中国政府は「人道的な対応を」、中国ネット民は「ビンボーでかわいそうなうちの漁民をいじめる韓国許さまじ」という主張で、韓国も大変だなと同情してしまう。
中国漁民とバトルした末、海上警察官が殉職したのは昨年のこと(詳細は文末関連記事を参照)。「今後は発砲も辞さず」と強硬姿勢を予告していた韓国だが、とりあえずゴム弾で、と撃ってみたらそれで死人が出てしまうのだから、世の中なかなかうまくいかないものである。李明博大統領が中国を訪問した際、衝突拡大を防ぐための各種施策で合意したはずだが、その中になにか御利益のある手段はあるのだろうか。
■けんか相手は一人まで
さて、このニュースを見た時、ぱっと思いついたのが日本の尖閣問題への影響。ひょっとしたら日本にとってはプラスになる可能性もある……と思って、ツイッターに書きかけたのだが、人死にを喜ぶようなことを言うのはいかがなものかと自粛したのだが、東京大学の川島真先生がその話をブログでざっくりと書いておられた。
黄海海上で韓国側のゴム弾で中国人の漁船員が死亡。中国側は強烈抗議、韓国側は遺憾の意。南シナ海、尖閣、黄海はいつも連動し、どこかで火がつくと、どこかで鎮火が中国側から計られてきた。もしかしたら、今回もこれで中国側は態度を軟化させるか。
けんかっぱやいことで有名な中国様だが、同時に二人の相手はしないのがポリシー。韓国を虐める時は韓国だけ、日本を叩く時は日本だけ、フィリピンを叩く時はフィリピンだけ、とシングルタスクのけんかをこころがけている。というわけで、今回、韓国の一件が日中関係にどう影響するのか、というのは見物である。
そもそも中国様のけんかの終わらせ方というのがなかなか難しい。明確な手打ち式のようなものがあるケースはまれで、中国様が他のけんかはじめたりしているうちに、前の件についてはなんだか盛り下がり、気づいたら両国の指導者が顔を合わせて……ともやもや~と手打ちすることが多い。
まあもやもやと仲直りしても数年以内にまた衝突するのは目に見えているのだから、それがいいのかどうかはよくわからないが(例えば10年、20年衝突を回避できるスキームを作れるならば、日本側の譲歩も選択肢になるのではないか)、潮目の変わり目になるかどうかは気になるところ。
もっとも中国は「日本の国有化は絶対に許せない」と史上空前の煽りっぷりを見せていただけに、ここで軟化すればいままでの盛り上がりはなんだったのかという話になる。習近平体制誕生まであと半月というタイミングでもあるし、今回の韓国の一件は寛大な心で見逃して、日本叩きに励むのではないだろうかと私は予想している。ちなみに新華社は「
韓国海上警察が発砲=中国漁民を“誤殺”」との記事を発表。韓国側は「非殺傷製ゴム弾」を使っていたのだ、という話を強調している。
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