中国の海洋監視船に日本の巡視船が駆逐された件について。
■日本巡視船が駆逐された?中国側が体当たり?
「日本船を駆逐」と主張、中国国家海洋局
中国国家海洋局は30日、中国の海洋監視船の船隊が同日に沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)領海で活動していた日本側船舶を駆逐する措置を取ったと発表した
日本巡視船が「駆逐」された?!と驚くニュース。日本海上保安庁は「駆逐された事実はない」と反論しているが(
時事ドットコム)、中国では大きなニュースになったほか、英語圏のニュースでも「日本の船が追い出されたらしいぜ」と話題になっている。
国家海洋局ウェブサイト掲載の原文をみると、「中国海監50号、15号、26号、27号の4席は我が国の釣魚島領海内で主権擁護の定期巡行を実施。我が領海での違法活動を続ける日本船に対して監視・証拠保持を行うと同時に、我が国の主権に関する立場を厳正に主張し、
日本船に対して駆離措置を実施した」とある。
「日本船を追い払ったのかよ、まじかよ、戦争じゃん!」というのが素直な読み方だが、ちょっとすれてくると「駆離措置ってそもなんぞや」というほうが気になってくる。
この点についてもっとも強烈だった噂は、「体当たりや!中国船が日本船に衝突したんや!というもの。衝突直前の写真と題した写真までネットには出回っているなど盛り上がっていたが、日中双方で発表がなく、初期の噂以上の新たな情報がでてこないことから考えてもデマとみるのが妥当なところではないか。
衝突の噂についてはブログ「
メモノメモ」さんが詳細に検証している。写真のトリミングを使って、迫力ある衝突紙芝居写真を作り出したのでは、という分析にはなるほどとうなづかされた。興味ある方はぜひご一読を。
■電光の一撃!
では「駆離措置」とはいったいなんなのか、というナゾが残る。あれこれ調べているうちに30日の一件については、中国国家海洋局のプレスリリースより早く、共同通信が報じていたことがわかった。
また尖閣諸島周辺に中国船 11日連続
第11管区海上保安本部(那覇)によると、海洋監視船4隻のうち「海監50」は電光掲示板に中国語で「貴船は中華人民共和国の管轄海域に入っている。すでに法律違反を行っている。すぐに離れなさい」と表示した
この電光掲示板こそ「駆離措置」の実態だというのが私の読みである。というのも中国船舶がやった行動は「日本領海に入る、拡声器で主張、電光掲示板で主張」の3つ。前二者はこれまで何度もやられているのは間違いないので、わざわざ発表するほどの新鮮味があるのは電光掲示板だけということになる。共同通信をもとに中国語でも電光掲示板アピールのニュースがいくつか広まっていたことも傍証となる。
■話を盛りすぎ?それとも大成功の外交宣伝?
この「駆離措置」が電光掲示板だとしたらあまりにも話を作りすぎ。他の部局に連携する動きもないことから、ちょっと盛り上げてみただけではないかと考えている。
一方で、環球時報の社説が「
中国が日本船を”駆逐”、段階的な勝利をおさめる」があるではないか、との反論もありそうだ。同紙英語記事を参照してか、「尖閣衝突は新たなステージへ」的な記事を書いている英語メディアもあり、友人のACEFACE氏は「宣伝的には成功した」と論評している。
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