■ヒラ党員胡錦濤の初日■
Tiananmen Square, Beijing Olympics 2008 / IvanWalsh.com
■ヒラ党員・胡錦濤
習近平に党総書記、中央軍事委員会主席の座を譲り、ヒラ党員となった胡錦濤さんですが、来年3月の全国人民代表大会までは国政のポスト、国家主席、国家中央軍事委員会主席のポストはキープしています。というわけで、ヒラ党員にして国のトップである微妙な立場の胡錦濤さんの行動をご紹介します。
プレジデントの肩書を使えるうちにと、ヒラ党員国政トップという引退直前の状態で訪米したのは江沢民でした。同じことが胡錦濤にもあるのでしょうか。同じくヒラ党員となった温家宝が早速カンボジア、タイに向かっていますが、まだ3ヶ月ありますから胡錦濤さんもどこかでハナムケ旅行でもすることでしょう。
■胡錦濤の引退に感謝 by 習近平
さて、党大会まで出ずっぱりだった胡錦濤ですが、党のポストは15日で引退。同日、人民日報が引退に対し祝電(?)を送っています。
歴史的使命を担当する強い指導集団(人民日報 2012/11/15)
いま、党と人民の事業を受け継ぎ、党の指導層の新旧交代を推進めるため、彼らの中の多くの同志は率先して中央の指導地位から退き、共産党人の広い胸の内を表し、党と人民の事業に対して比類なき忠誠を表した。
まさにその時、全党同志は深い友情を抱き、胡錦濤同志、その他の引退した指導同志に心からの感謝と崇高な敬意を表す。全党同志は深く、習近平同志を総書記とする党中央が全国各族人民を団結、指導し・・・(以下略)
「習近平同志を総書記とする~」のくだりは、胡錦濤がやってきたのと同じように習近平が中国を導いてくれますよというリフレインです。それはさておき、引退してくれてありがとうとはなかなか言えることではありません。
この人民日報の記事は15日の習近平重要講話の焼き直しです。
習近平「胡錦濤らは崇高な品性と徳性、高尚な行動を体現した」(京華時報 2012/11/16)
胡錦濤同志を総書記とする党中央は全国各民族人民を団結、指導し、世界が注目する輝かしい成績を収めた。
党と人民の事業を受け継ぐため、胡錦濤同志、及び呉邦国、温家宝、賈慶林、李長春、、賀国強、周永康ら同志が率先して党中央の指導地位から退き、崇高な品格、特性と、高尚な行動を体現した。我々は彼らに崇高な敬意を表する。
「率先して」と
誰かを道連れにしたかのような書き方ですが、どうもそうではありませんありますが、誰かを道連れにしてやめたわけではありません。
朝日新聞は自らの
軍事委員会主席引退をカードに江沢民に完全引退を迫るという筋書きで描いていましたがとんでもない。
まあもともと軍部にはしっかり子飼いを残していますから完全引退
とはいいがたいですしねではありませんしね。
胡錦濤の潔い引退をだしに他の長老をディスっているという線も考えられはしますが、しかし長老のお陰で総書記になれた習近平がそうしたイヤミを言うはずもありません。胡錦濤に感謝発言の真意は現時点では図りかねます。
■胡錦濤と習近平の序列はどうなってるの?!
胡錦濤、習近平、中央軍事委拡大会議出席、重要講話(新華社 2012/11/17)17日、中央軍事委員会拡大会議が開かれました。主席のポストを習近平に譲ったはずの胡錦濤も出席。拡大会議の範囲がよくわからんのですが、拡大と付けとけば裁量で関係ない人も出席できるというシステムになっています。
お客さんとなった胡錦濤は、「習近平同志は党の総書記に相応しく、中央軍事委主席にも相応しい」といきなりのヨイショ。ちなみに江沢民引退当時に政治局宛に送った退職願でも同じようにヨイショしていましたので、模倣しただけでしょう。ただ、手紙に書くのと隣のおっさんに直接言うのとでは違いますよねえ。
また、「党の総書記と中央軍事委主席の新旧交代実現は党の事業継続と国防、軍隊建設事業の長期的発展に有利であり、国家の長期的安定に有利」と、死にそうな顔で(嘘)世代交代の必要性を強調しています。さらに、「若い頃に軍隊での工作時期があり、また地方指導時期にも軍隊工作に関っていた」と軍とのかかわりにも言及。全力で習近平ageですか。
さて、気になる点が1つ。党大会終了後も胡錦濤、習近平の序列で紹介が続いています。この拡大会議は、胡錦濤、習近平、前副主席、現役副主席の順番。江沢民の時は総書記交代の時点で逆転していたのですが、胡錦濤は国家主席退任まで時間限定で花を持たせてくれる、ということなのでしょうか。これから三世代の指導者が同居しますし、序列がめんどくさくなりそうです。
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朝日新聞記事について、事実誤認です。
11月9日付「胡氏、「院政」へ暗雲 江氏が揺さぶる 中国共産党大会」のなかで、峯村健司、林望記者は、次のように書いています。
>胡氏は軍での権力掌握を確かなものとするための人事を押し通し、「腹心中の腹心」たちを軍の要職に配した。「引退しても十分に影響力を残せる完璧な布陣」と、この党関係者は評する。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201211080955.html
記事の論評は、事実に基づいて行なうことが建設的です。中国の公式メディアの発表を紹介してくださり、勉強になります。日本国内の新聞についても、きちんと目を通してくださると幸いです。