• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

タイの看護師がシンガポールに脱出するわけ=国民皆医療制度と非正規採用(ucci-h)

2012年11月21日

■タイの看護師不足問題■


2015年のアセアン市場統合によって、域内の人の流れが活発化すると、タイの看護師不足が深刻化すると懸念されている。シンガポールなどより条件のいい国に看護師が流出してしまうだろう、と。そもそも現時点でもタイの看護師不足、看護師の待遇の悪さは問題となっている。

20121121_写真_タイ_
*タイの看護師のデモ バンコク・ポスト紙より。

■タイ公立病院の激務とシンガポールのオファー

タイでは毎年5~6千人が4年制の大学看護過程を卒業している。総数はおそらく10万人を超えるだろう。だが、その大半が公立病院で非正規スタッフとして働くことを余儀なくされている。

タイは国民皆医療制度(いわゆる30バーツ医療)があり、公立病院はいつも大混雑。看護師も大忙しで、2連続シフト16時間勤務につくケースもしばしばだ。適正な看護師数と比べて約3万人不足しているという。

これほどの激務にもかかわらず、なかなか正規採用されないのが現状だ。公立病院は税金で運営されているため、正規職員の枠が厳しく制限されているのが要因だ。

しかも非正規採用と正規採用では給与、昇進、研修などで大きな差がでる。また昨年来、公務員給与が引き上げられたこともあって、専門課程を出たプロフェッショナルにもかかわらず、一般公務員以下の給与だという。こうした条件であれば、看護師の海外流出も仕方がないことだろうか。タイの看護師の月給は1万2000バーツ(約3万3000円)ほどだが、シンガポールの病院は食・住補償付きで5万バーツ(約13万3000円)という好条件でオファーしているという。


■改善計画立案も実行に遅れ

政府も手をこまねいているわけではない。タイの公務員委員会(OCSC)と公衆健康省は看護師の正規職員への変更を摸索している。2013年からの5年間で、健康関連で7万人の正規職員を採用する計画だが、うち1万7000人が看護師の枠となっている。

だがこの計画も思うように前進してはいないようだ。2012年6月19日、公衆健康相が、看護師3667人を正規職員として3カ月以内に採用すると発表したが、実現しなかった。10月16日には看護師1000人以上がタイ首相府前でデモをする騒ぎとなっている。看護師らは11月中の採用実行を要求、さもなくば大量辞職すると示唆している。OCSCと国家予算局は年内にも枠を決めて採用する意志を示している。

安く医療を受けられるタイの国民皆医療制度。実は看護師などスタッフのコスト抑制が支えてきた。しかし、高齢化の進行、隣国の看護師ニーズの高まりを受け、限界に近づいて来ているように見える。看護師の正規公務員への昇格は、国の財政負担につながるもの。税金を投じての国民福祉の拡大も、ついに費用面での障害にぶつかっている。

関連記事:
「医療ミスをごまかす最強言い訳2012」が登場=三面記事と民間情報戦―中国
「病院での違法追悼禁止」を中央省庁が通達=医療紛争と補償金ゴロと伝統観念―中国
医療費は日本のたった18分の1?!タイの不思議な医療事情(ucci-h)
【中国救いのない話】交通事故加害者、医療費支払えないと自殺=被害者もその直後に死亡
通院よりも入院のほうが「安い」=タイ医療保険と入院体験記(ucci-h)

*本記事はブログ「チェンマイUpdate」の2012年11月19 日付記事を、許可を得て転載したものです。

forrow me on twitter

トップページへ

トラックバック一覧

  1. 1. 看護師 最新情報 - 知識陣 (健康 福祉)

    • [知識陣 健康]
    • 2012年11月23日 05:48
    • 看護師 に関する最新情報

コメント欄を開く

ページのトップへ