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2012年11月22日
■立ち退き拒否と陸の孤島
2007年、世界を震撼させた「最強の立ち退き拒否」を覚えているだろうか?マンション開発のために土地収用が行われた。開発業者が周りを掘り下げ文字通り陸の孤島となる中、一軒だけ立ち退きを拒否。あまりの絵面の面白さに世界中のメディアが注目し、根負けした開発業者が補償金を上乗せしたという一件。
似たような話は星の数ほど起きているのだが、絵面の面白さで勝てる事件はない。が、今回のネタもこれはこれでなかなかの破壊力である。
「立ち退き拒否住民を無視して、道路を作ってやったわい!」の図。浙江省温嶺市駅前にある建設中の道路のど真ん中に、家が一軒取り残されている。
しかも驚くべきことに、これは独立した建物ではない。横にも後ろにも建物がくっついていたのだが、そっちだけ先に取り壊されているのだ。
うーむ。これで強度が保てるのであろうか。
ともあれ、この写真が21日夜にネットにアップされてたちまち話題に。22日午後、温山市大渓鎮政府は立ち退き拒否住民と契約を交わしたと明らかにした。高額の補償金を上乗せして契約を取り付けた可能性が高いが、住民側が契約していないと報じているニュースもあり、まだ詳細は定かではない。
■オモシロ画像は政府を倒すリソースである、炒作の時代
ともあれ最終的には地元政府が高めの補償金を支払う可能性が高い。というのもこれほどおもしろい絵柄を作り出した時点で、ネットに流れれば話題となって政府側の敗北となることは目に見えているからだ。早く決着しないと、話題のネタに続々参戦してきたネット民たちが突撃し、「鎮政府トップの愛人発見!」とか、「鎮の役人のくせにローレックス持ってるで、こいつ!」的なネタを展開して、別な火種に延焼しかねないとも限らない。
面白いことで注目を調達し目的を達成する手法を「炒作」という。詳しくは記事「炎上で儲ける中国版フリーミアム「炒作」=大根アニキの逆転劇―中国」。とりあえず習近平時代になって最初の「大笑い炒作事案」ということになるのではないか。
今後もこういう事例は続々と続くだろう。問題を解決するには話し合いよりも、炒作、あるいは暴力のほうが有効だという状況はトップが変わったぐらいでは変わらないのだから。
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