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2012年11月30日
1 Chinese RMB [squared circle] / Mr Wabu
■過剰徴税
2012年11月28日付新京報の記事「河北多地征“过头税”寅吃卯粮」(河北省各地で“過剰税”を徴収、前借り徴税続く)が劇的に面白い。河北省での過剰徴税を紹介したものだが、もう笑うしかないネタがたっぷりと紹介されている。
まず抑えておくべき言葉として2012年のキーワードともなった「过头税」(過剰徴税)についてご紹介。みなさんご存知のとおり、景気低迷に苦しんだ中国。経済成長が鈍化すれば税収の伸びも鈍化するのが道理というものだが、なにせ徴税目標は年初に立てているので官僚様としてもすんなりと税収減を見過ごすわけにはいかない。
というわけで、「来年の税金、早めに払え」「去年の税金、足りてなかったよん」「理由はともかく、金払え」などなどさまざまな理由をつけての過剰徴税の嵐が各地で吹き荒れているという。
■税務署職員VS納税者の最前線
新京報記事はそのリアルな最前線を描いていて面白い。
例えば、国税局に呼び出されたある企業経営者。税金はきちんと払ってますけど、と抵抗すると、「いいから先に金払えや。理由は後で相談しような」と言われたのだとか。
例えば国税局のビルにおいて。札束を抱えた企業経営者たちが行ったり来たり。「10万元(約130万円)と言われたけど、コネを使って4万元(約52万円)に値切ってやった!どうよ?」「あかんで。コネに頼ったけどまだまだ高いんや」との会話。
さらに税務署職員と企業経営者が「5万元(約65万円)が無理なら3万元(約39万円)はどないや?」「きっついですわー。2万元(約26万円)に負けてもらえませんか?」などと値切り交渉。税務署職員の手元のリストには納税額リストがあるのだが、もともとの納税額が二重線で消され、値切り交渉後の新たな金額が書き込まれている。コネと交渉術で節税可能になるというわけだ。
■尖閣問題までネタに
そうしたバトルが繰り広げられている中で、飛び出してきたのが冒頭の一言。河北省槍州市献県の企業英英社・李建国さんは10月末、他の企業経営者と一緒に呼び出された。
税務署の担当者曰く、「最近、人民日報に掲載された社説を見るに、私の経験からいって、尖閣をめぐって日中の戦争が起きるだろう。そこで本県の企業はもう一度納税していただき、国を支援してもらいたい。」
尖閣問題をネタにして予定外の納税をお願いするという笑い話のような展開だ。しかも税金の振込先として渡された口座番号は税務署のものではなく、税務署職員のものだったという。どさくさにまぎれてネコババするつもりだったのか、あるいは自分の口座に入れた後、適当な名目をでっちあげて国庫に納めるつもりだったのかは定かではない。
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