中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2012年12月04日
日本沿岸警備隊巡視船しきしま / ume-y
■尖閣問題、飽きてませんか?
2012年秋の一大トピックとなった尖閣問題。反日デモから始まり、交流拒否やら日本製品不買の反日モード。さらには中国巡視船による尖閣近海の日本領海、接続海域侵入といった問題がてんこ盛りで起きた。今なお何一つ解決していないが、慣れてしまったというか、関心が薄れつつあるのが現状ではなかろうか。
だが、この尖閣問題に大きな転機が起きそうな気配が漂っている。それは何かというならば、中国様の持つモグラ叩きハンマーが東シナ海上空から南シナ海へと移動する可能性があるのだ。
これまでも本サイトで取り上げてきたが、中国の外交戦略の原則は「けんか相手は一人まで」。近年、毎年新たな燃料が投与されている黄海、東シナ海、南シナ海と中国を取り巻く海洋主権紛争においても、同時に2個所以上が炎上したケースはない。
今年10月には中国漁民が韓国海上警察の暴徒鎮圧用ゴム弾によって死亡する事件が起きた。通常ならば「中国ネット世論沸騰、中国外交部も怒りのクレーム見せつけ」とやるケースながら、今回は日本とのけんかを優先するべく問題をスルー。中国外交が「けんか相手は一人まで」原則を遵守していることを改めて印象づけた。
■南シナ海に漂う嫌なにおい
「けんか相手は一人まで」原則をベトナム、フィリピンの立場から見るならば、「日本が叩かれている間は安心です」ということになる。ところが南シナ海問題が今、かなりきな臭くなっているのだ。
・中国の新版パスポート問題
中国が今年5月に導入した新版パスポート。実はその中に、小さな中国地図が描かれていたが、南シナ海のほぼ全域を中国領海と明記していることが発覚し炎上。フィリピン、ベトナム、そしてインド、米国まで巻き込んだ騒ぎとなっている(関連記事)。
このパスポート問題よりももっとリスキーなのが海南省の条例だ。
・海南省が南シナ海対象の「沿海辺境防衛治安管理条例」を制定(11月27日)
同条例は海南省管轄の海域で、「違法停船しもめ事を起こす」「島に上陸する」「海洋防衛設備やその他生活設備を破壊」「国家主権の侵害、国家安全に危害を加える安全活動」などがあった場合、その外国船舶に対して、「臨検、拘束、追い払う、停船させる、航行ルートを変えさせる、帰港させる」などの措置を行うと定めたもの。
正直、この条例を導入することで、現行の法律でできなかったことが何かできるようになるのかよくわからないのだが、南シナ海問題で強硬姿勢に移行するというシグナルを発していることは間違いない。しかも中国の法律ではなく海南省の条例にしたことで、尖閣近海には適応されないことになる。日本ではなく、南シナ海の領有権を主張するASEAN諸国をターゲットにしているというわけだ。
■米国の動向
今、中国メディアの注目を集めているのが、尖閣問題における米国の動向だ。
米、尖閣防衛を再確認 異例の明記、上院修正案を可決MSN産経、2012年11月30日国防権限法は国防予算の大枠を定めるもので、他国の領有権をめぐる問題に言及するのは異例。法案は下院との協議を経てオバマ大統領の署名で成立する。追加条項は「東シナ海はアジアにおける海洋の公益に不可欠な要素」とし、米国も航行の自由という国益があることを明記。その上で「米国は尖閣諸島の究極的な主権について特定の立場をとらないが、日本の施政下にあることを認識している。第三者の一方的な行動が米国のこの認識に影響を及ぼすことはない」とした。また、東シナ海での領有権をめぐる問題は、外交を通じた解決を支持し、武力による威嚇や武力行使に反対と表明。「安保条約5条に基づく日本政府への約束を再確認する」とした。
中国漁船が南シナ海でケーブル切断-ベトナム石油探査会社が抗議
ウォールストリートジャーナル、2012年12月4日ベトナム国営石油・ガスグループ(ペトロベトナム)は3日、南シナ海でベトナムの船が地震石油探査を行っていたところ、敷設中のケーブルを中国漁船2隻が切断したと発表した。中国は最近、新規則を打ち出し、南シナ海にある係争諸島付近で地元の警備機関が外国船に乗り込んで取り締まる権利を付与しているもようで、周辺関係国の懸念が高まっている。ペトロベトナムの探査部門幹部ファム・ベト・ドン氏によると、ベトナムの探査船「ビン・ミン02」号が同国クアンチ省のコンコ(Con Co)島の南東沖合43マイル(約70キロ)で地震探査を行っていたところ、2隻の中国船が11月30日、敷設中のケーブルを切断したという。