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日本のラノベ作家と中国のネット小説家、どっちが儲かるの?中国人オタクの議論(百元)

2012年12月04日

■中国オタク「日本のラノベ作家ってウチの国のネット小説家より儲かるの?」■

このライトノベルがすごい! 2013

■日本のラノベと中国のネット小説

今年も「このライトノベルがすごい2013」が発売され、その結果が中国オタクの間で話題になっています。今回1位になった「ソードアート・オンライン」の人気は予想通りだったようですが、他にもイロイロと情報に関する話題が飛び交っていますね。さて、今回はそんなライトノベルのネタについて一つやらせていただきます。

ここ数年、ライトノベル原作のアニメが増えたり、中国本土でも簡体字の中国語翻訳版が正規ルートで出版されるなど、中国オタク内でのライトノベルの存在感は昔に比べてかなり強くなっています。

そういったライトノベルと比較してたまに話題になるのが中国の「ネット小説」です。

実は中国のネット小説は海賊版のあふれる環境に置いて数少ない「海賊版に潰されず、独自に発展したコンテンツ」でして、現在の中国のネット関係のコンテンツの中でも非常に人気があり、映画やドラマ、ゲームの原作としても重宝されています。


■ネットユーザーの成り上がりロード=ネット小説家

中国のネット小説が海賊版系のコンテンツに対抗できた理由の中には、「コピーされる以上に安く大量にコンテンツ(小説)を提供すればいい」とでもいう様な形になっている所があるとも言われており、そのコンテンツ量の豊富さと手軽さから、中国では非常に強い暇つぶしのコンテンツとなっている感もあります。

そして、中国のネット小説界隈がそれなりに商売として成り立っていることから、ネット小説家になるというのは、中国のネットユーザーにとって数少ない有望かつ「のし上がれるルート」だとされています。

中国のネット小説の最大手としては「起点」(と起点を含むネット小説サイトを複数運営している「盛大文学」)というサイトが有名なのですが、こういった中国のネット小説サイトの課金体系はお試しとして作品の一部(連載作品の古い部分など)が読めるようになっており、連載作品の新しい部分に関しては課金して読むといった形になっています。

基本的には文字数課金でサービスの形式にもよりますが、0.05~0.02元/千字といった所のようです。
ネット小説を書いている作者にもこの課金の一部が入るので人気になれば月に数千~数万元稼ぐと言ったことも可能で、ネット小説を原作としたドラマやゲーム展開といった「夢」もある……とされていますね。

そんな中国のネット小説に関して、中国のソッチ系の掲示板で「日本のライトノベル作家と比べて収入的にどうなのか?」といった疑問についてのやり取りを見かけましたので、今回はその辺についてを例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


■中国人オタクの議論

中国ではコネやカネの無い人間がコンテンツでのし上がろうとする場合、ネット小説というのはかなり希望があるとされているし、実際成功者の情報は多い。そこで疑問なんだが、日本のラノベ作家と比較した場合はどうなんだろう?

それに関しては私も気になる。実際の所、日本のラノベ作家ってウチの国のネット小説家より儲かるの?原稿に関する報酬だけで考えた場合、日本のライトノベル作家ってどくれらい儲かるんだろうか?文字数計算だとどのくらいのペースなのかとか、知りたい。

自分もついでに質問したいんだが、ラノベ作家の収入ってどうなってんだ?漫画みたいに基本の原稿料+単行本の売り上げってことでいいんだろうか?

原稿料が発生するのは雑誌に連載している時だけでしょ。ラノベも専門の雑誌はあるけど、基本的には単行本での発売だから出版印税が収入と考えていい。逆に漫画は連載されても単行本にならないケースもあるから原稿料とかが重視される所もあるんじゃないかね。

確か以前見た資料によれば、ラノベ作家の新人は単行本の印税が6%、400字詰めの原稿用紙1枚で1000~2000円というのが相場らしい。ラノベは書き方次第でかなりページを埋められるし、かなり稼げると思う。日本のラノベ作家って基本的にはウチのネット小説家の普通レベルの成功者よりも稼いでいるんじゃないかと。

そうか?確か「起点」のランキングの前の方にいる連中って年収が百万元超えるって話を聞いたんだが。日本円でも千三百万円くらいになるし日本の一般的なラノベ作家よりも稼げているはずだろ。

トップの数名だと、年収一千万元とかいくでしょ。日本のラノベ作家も仕事しながら書いている兼業が多いし、アニメ化されるような大作を書いているのでもない限り、収入的にはそこまで多くはないと思う。

起点の報酬に関しては割と簡単に計算できる。あそこでは1人の読者が千字読んでくれれば0.01元入ってくる。だから読者が五千人くらいつけば50元、そして1日の更新ペースを5千~1万字くらいで書いていけば1日数百元の収入になるし、1か月で1万元超える。他にも月契約の読み放題の会員もいるし、携帯サイトからの収入もあるだろうからトップクラスのネット小説家の収入が毎月1万元超えているってのは容易に想像できる。

毎日更新が無くても、全体の文章量で大きく稼げるケースとかもあるしね。月収1万元超え自体はそんなに珍しくないと思う。人気作品は出版もあるし、そういう勢いで作品を連載していければ余裕で食っていけるだろうな。その辺りになれば日本のラノベ作家以上に稼げてるんじゃないかね。

お前、その制作ペースと内容のクオリティをずっと維持できていると思ってんのか?作者擦り切れるぜ……実際、途中で潰れるのも多い。あと読者をずっと維持できるわけでもないし、ブックマークしてくれた読者が、そのまま続きをずっと読んでくれるとも限らない。そもそも活動や収入の形態が異なるので、ネット小説で大成功した例を日本の普通のラノベ作家と単純に比べるのはちょっと違うような気がするんだが……

日本のラノベ作家は兼業も多いらしいし、そんなに稼ぎは良くないんじゃないか?ウチの国のネット小説家の方が大成功すれば稼げているようなイメージなんだが。

日本のラノベ作家がそんなに稼げるわけないだろ。ウチの国のネット小説の方が当たればデカイ。ラノベは1冊の本を出すペースが非常に遅いし、そんなので月収百万円とかになるわけないだろ。実際、日本のラノベ作家の発言は貧乏ネタや金欠ネタばかりじゃないか。

まぁ大当たりしない限り、ラノベ作家もそこまで儲かる職業ではないと思うが、起点の収入ってのもそこまで多くはないはずだぞ……一応年収100万元超えるっていう宣伝は聞くけど、それはあくまで神レベルの大成功や、瞬間最大風速的なモノだし。起点では月千元以上稼げれば普通の作家にとっては上々って感じでしょ。食っていけなくもないし。そしてそれ以下の二線級にもなれないのだとせいぜい「最高で」ひと月に数百元稼げるときがあった程度の不安定な状態なわけで。専業になれるのは本当にわずかだ。

一般的なレベルで比較した場合、日本のラノベ作家がウチの国のネット小説家より稼げないってのはさすがに無いんじゃないか?出版業界が世界的に縮小傾向とは言っても、日本はウチの国のような審査制度は無いし、日本の本屋はライトノベル専用の本棚とかあるんだぜ?

ウチの国のネット小説家のトップレベルの収入なら日本のラノベ作家の上の方とも普通に比べられると思う。ただ、ネット小説家は大量に書かなければいけないから消耗も激しいし、平均年収にしたらどうなのか……

ラノベの印税の割合が6%だとして1冊500円で出版が1万部だとしたら30万円が入るわけだが、2万元強って考えるとウチの国のネット小説家でも瞬間の月収1万元超えっていうのはそれほど珍しくないから、そこまで差は無いように感じる。しかし字数的にはラノベ1冊が日本語で十数万字程度(しかも全部漢字の中国語に比べれば密度は薄くなる)だから、一日6千字が最低ラインとも言われるネット小説に比べて随分と効率よく稼げるのは間違いないな。

宣伝されるのは「成功の部分」だけだからな。まぁでも、ウチの国ではネット小説家で食っていけるヤツがわりといるのは間違いない。そしてサイト上の小説閲覧による報酬以外にも、各種賞金やキャンペーン、更には出版やネトゲやブラウザゲームのゲーム原作なんて夢もあるわけだし。

年収百万元クラスの話だったと思うが、公務員やめてネット小説家になって年収十数倍なんてニュースが報道されているから、大当たりして年収百万元、家を買うなんてのは十分あり得るだろう。他には確か、年収三十万元~十万元といった辺りがニュースになっていたな。

日本のラノベ作家のトップクラスはもっと稼いでいるような気もする。例えば「とある魔術の禁書目録」の鎌池和馬はデビューから6年で770万部売っているから、本だけで4億円近く稼いでいて(平均年収は人民元で500万元くらいか?)、それに加えて各種版権収入があるはず。トップ同士を比べるとやはり日本の方が上っぽいような……

ウチの国のネット小説と日本のラノベを比較した場合、収入レベルがそもそも違うから比較にならない気がするな……上の方だけを見れば良い勝負になりそうな気もするが、底辺の規模が違う。ウチの国のネット小説は、結局の所廉価な労働力で生産されたものだし。

それでも一応「日本の一般的なライトノベル作家よりも稼げる我が国のネット小説家」がいるのは間違いないでしょ。ウチの国の雑誌に連載する作家より、人気のネット小説家の方が稼いでいるっぽいイメージはあるし。

確か以前出た話では、起点というか盛大文学関係で1千万元近く稼いだケースというのはあった。その作者、昔ほどではないけどそれなりのペースで出しているから、1年に数百万は稼げるでしょ。あと今のトップクラスのネット小説家も、映像化でやはり五百万元くらいはいっているはず。この辺ならば日本のラノベ作家と同じかそれ以上に稼げるケースはあると思う。しかしその収入を維持する更新ぺースを考えると普通のラノベ作家よりも大変そうに感じられるな……

ただそれでも、ネット小説ってウチの国のクリエイターにとっては数少ない夢を見れるジャンルではあるんだよね。ネット小説の収入って、うまくいけば底辺の仕事やるよりも儲かるし、安全だ。他のジャンルの仕事だと、どうやれば上に行けるのか分からんし。

とまぁ、こんな感じで。


■中国ネット小説家の仕事量が半端じゃない件

中国オタクの間におけるライトノベルへの認識についてもありますが、中国のネット小説のイメージが出ているのも面白いですね。

なんだかんだで中国では、ネット小説というのは「稼げる」「夢がある」といったイメージが強いようです。しかしそれと同時に中国のネット小説は課金やランキング基準などから、長いストーリーをバンバン更新していかないと儲からないシステムになっているので、その辺りの厳しさも認識されているようです。

上の方の発言にもありますが、中国でネット小説家として成功するには少なくとも中国語で数千字/日くらいのペースで長期的に更新できることが必須とされていますが、コレはかなり厳しそうです。中国語は全部漢字なので、日本語で考えた場合は一万字/日ではきかないレベルのペースになるでしょうし。

こうやって考えてみると、中国のネット小説界隈には夢と絶望が詰まっているんだなーとも感じてしまいますね。とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

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*本記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の2012年11月25日付記事を、許可を得て転載したものです。

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