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中国、ノルウェーへの恨みを忘れず?!ダライ・ラマ効果と劉暁波効果

2012年12月08日

ダライ・ラマ効果とノルウェーの災難について

Jumping salmon 1
Jumping salmon 1 / fotoroto


■ダライ・ラマ効果

ダライ・ラマ効果(The Dalai Lama Effect)という言葉をご存知だろうか?法王の御利益……といった話ではなく、もうちょっと残念なネタだ。

 2010年10月に発表された論文「Paying a Visit: The Dalai Lama Effect on International Trade」が明らかにしたもので、ダライ・ラマが訪問した国の対中輸出は翌年、翌々年と8.1%減少するという。面白いことに2年間でその効果は消えるという。
(関連記事:「中国、ダライ・ラマと会談で貿易削減の報復」チベットNOW@ルンタ、2010年11月4日)

まあ、つまりは中国が政治問題に対する報復措置として経済制裁をばりばり活用していることの典型例である。なにせダライ・ラマは高齢にもかかわらずフットワークが軽い。「ダライ・ラマ訪問」という制裁フラグを立てる国の数が相当数にのぼるため、論文としての統計処理もしやすいという寸法だ。その点、「漁船が体当たりして中国を怒らせた場合」「中国と領有権でもめている島を政府が購入した場合」はサンプルが少なすぎて、統計処理は厳しそうだ。


■中国の建て前

さて領土問題やら外交的な対立で勝手に経済制裁してはならないというのが、自由貿易やら世界貿易機関(WTO)やらのルールである。中国はその国際ルールを激しく破っているのは明々白々。

しかしながら、国際ルールを破っていないよ、という建て前がちゃんと用意されているのが面白い。例えば2010年の対日レアアース輸出規制については「国としては規制していないが、愛国心に燃える企業家たちが勝手に差し止めたのでしょう」(関連記事)、今年の反日デモと日本製品ボイコットについても「愛国心にも燃える国民が……」とのアナウンス。

また今春の南シナ海スカボロー礁でのにらみあいで中国様のご不興を買いバナナが実質輸出できなくなったフィリピンの場合は「検疫強化」を名目に実際の通関作業をストップさせるという技を使用。この通関作業遅延は日本に対しても発動されたとの話も流れたが、その後続報は伝えられていない。

なお上述のダライ・ラマ効果は胡錦濤体制(2002年~2012年)以降に初めて出現したものだという。一口に改革開放30年というが、中国の成長が急加速し、大国としての自信が全面に出てきたのは21世紀に入ってから。胡錦濤のパーソナリティーというよりも、中国の自信の高まりに呼応して、ダライ・ラマ効果が生まれたのではないか。


■ノルウェーの災難

さて、そんな中国の報復をがっつり喰らったのがノルウェー。中国の人権活動家・劉暁波にノーベル平和賞を与えたのが原因だ。ノルウェー・サーモンの輸入がぱったり止まっただけでは済まず、自由貿易協定(FTA)交渉も無期限延期になってしまった。

劉暁波のノーベル平和賞から2年、そろそろほとぼりも冷めたのではと思っていたのだが、中国様のお怒りはまだ継続中だったようだ。

先日、北京市は45カ国を対象にトランジットビザの免除を導入すると発表した。来年1月1日より発効。これまで北京で乗り換え便を利用する場合でもトランジットビザを取得しなければ空港外に出ることはできなかったのだが、新規定で72時間の滞在が認められるというもの。

この45カ国にヨーロッパ諸国はほぼすべて含まれているのだが、ご丁寧にもノルウェーだけ外されている。これはひょっとして劉暁波効果ですか?!とちょっとした話題だ。まあ北京市の官僚さんがノルウェーと書き忘れたのでなければ、劉暁波効果以外に外す理由がないのである。

ダライ・ラマ効果は2年で消えるというが、ならば劉暁波効果は何年で消えるのだろうか?ついでに尖閣国有化効果も何年でチャラになるのか、気になる話である。

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